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ウェブ3がホンモノのイノベーションになるのは、「投機」と「山師」の向こう側である

ついに自民党まで前のめりになりつつある「ウェブ3」ですが、すでに実態としては迷走気味になっている感もあります。

コピー可能なデジタルデータを資産としても扱えるNFT(非代替トークン)は一気に盛り上がったと思ったら、もうバブル崩壊の様相を呈してきています。ツイッターの創業者ジャック・ドーシーの世界で最初のツイートはNFT化され、2020年に3億円もの金額で買われて世界中を驚かされましたが、今年のオークションではそれが3万円ぐらいにまで値下がりしてしまいました。

ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)も投機的な金融商品の域を出ず、一攫千金を狙う人たちが群がるばかりで、その先のビジョンはまだはっきりしません。米ドルや円などの法定通貨に連動し、価値が安定しているステーブルコインと言われる暗号資産も出てきていますが、価値が固定されているのなら結局はそれは電子マネーと変わりがありません。

ウェブ3はイノベーションにはなっていない

ウェブ3の中核であるブロックチェーン技術には無限の可能性があると感じていますが、「それを社会が何に使うのか」「どうすれば広く社会に価値を与えられるのか」というイノベーションの域に達することができていない、まだそういう段階にあるということなのでしょう。

個人的な考えとしては、ウェブ3の一分野である「トークンエコノミー」には大きな可能性が潜んでいると感じています。トークンエコノミーというのは、ミュージシャンやアーティストなどさまざまな個人がトークンを発行して販売し、それを購入した人がリターンを得られると言うものです。

アイドルのトークンエコノミーを考える

たとえばアイドルがデビューする歳に、ファン向けにトークンを発行するということで考えてみましょう。デビュー時のトークンは1枚1000円で、購入するとライブコンサートの先行予約権や、握手券に交換することもできます。これを1000人の人が買ってくれたなら、アイドル側には100万円が入り、音楽活動の資金とすることができます。

ここまでだとクラウドファンディングと変わりがありませんが、クラファンが一度限りの資金集めであるのに対して、トークンエコノミーはトークンという交換可能な「代替通貨」を軸とすることで、より持続的な関係を形成していくものです。アイドルが人気が出てくれば、最初は1枚1000円で売られていたトークンが、1枚1500円で追加発行されるようになる。すると最初のトークンをホールドしていたファンは、売却することで500円のリターンを得られます。あるいは売却せず、ずっとファンを続けて同時にアイドルの人気の上昇と自分のトークンの値上がりを楽しんでいくという選択もできる。

これまではアイドルを応援しても、ファンにはリターンがありませんでした。それがトークンエコノミーでは、そのアイドルの成長に伴ってトークンの価値が上がり、実利的なリターンも受け取れるようになる。そしてより大切なのは、ここでファンが得られるのは実利だけでなく、自分がトークンという財物によってアイドルを支援しているのだ、という参加の感覚なのだと思います。

新たな参加型社会が見えてくるかも

このようなトークンエコノミーがアイドルのみならず、さまざまなクリエイターや社会活動をする人、NPO、さらには楽曲や文学作品などにも広がってくれば、それは世の中のだれもが互いに出資者・支援者となり、つまりはだれもがパトロンになるような新たな参加型社会への道筋を拓いていくのではないか。そういう予感めいたものを私は感じています。

実はこのようなトークンエコノミーは、何年か前にも日本のスタートアップがいくつか試みたことがありました。しかし残念なことにウェブでこういう新たな試みがあると、たいてい最初は情報商材ビジネスの人とかネットワークビジネスの人とかが大挙して流入してきて、一気に胡散臭くなり、一般人は寄りつかず、投機的な行為が繰り返され、揚げ句に食い潰され飽きられて終わる……という顛末になることが多いのです。草創期のトークンエコノミーも似たようなものでした。

新規市場にはつねに「山師」たちが群がってくる

とはいえ、あらゆる新規市場にこのような現象はつきものです。1990年代のインターネットがそうでしたし、もっと古く遡れば、19世紀の終わりの自動車産業だってそんなものです。新しいテクノロジーが出てくると、最初にやってくるのは技術者や研究者であり、そのあとにわあっと「山師」たちが群がってくるのです。

しかしそれは否定されるものでもありません。詐欺師まがいの山師が優れた経営者に脱皮し、市場を一般社会に広める立派な役割を果たすようになることもあれば、逆に優秀だった技術者が金に溺れてしまってあらぬ方向に行ってしまうという光景もよく目にします。

しかしそのようにして揉まれながら、やがて新規テクノロジーはキャズムを超えて変容し、社会に定着し、社会を変え、イノベーションになっていくのです。

現状のウェブ3やトークンエコノミーはまだそういう段階には達していないということなのでしょう。今は「山師」たちが多く混沌としていますが、この波乱の先に見えてくる未来が必ずあるはずです。いたずらに否定するのではなく、長い目でウォッチしていく必要があるとわたしは感じています。

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