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満員電車の混雑を解消して自転車通勤率を増やす考え方

 混雑する電車やバスを避けて、自転車通勤をする人は世界各地で急増している。 スコットランドのハンドメイド自転車メーカー「Shand Cycles」が、英国内で行ったアンケート調査によると、通勤者の6人に1人以上は、コロナ感染リスクを避けて、自転車で通勤することを検討している。自転車通勤の許容範囲は、男性が片道31分、女性が27分と回答しており、自転車の平均速度からすると、自宅から5~7キロ、がんばれば10キロ圏内までの職場は、自転車通勤が可能なエリアということになる。

欧州では、ロックダウンの期間中は屋外での運動も制限されていたことから、ソーシャルディスタンスを保ちながら、トレーニングを兼ねた通勤スタイルを構築したい人の中で、自転車に乗り始める人が増えている。これは自転車メーカーにとってはビジネスチャンスであり、Shand Cycles社では、通勤時の安全性や快適性にも配慮されたクロスバイクの新モデル「Leveret(約26万円)」を、2020年4月に発売している。

欧州では、英国、フランス、オランダなどの政府が自転車通勤を奨励しており、自動車専用道や駐輪場などの整備を行っている他、事業者と従業員に対して、自転車購入の助成制度を充実させている。そのため、コロナ後は高級自転車が売れているのだ。

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日本でも、コロナ後に自転車通勤者が増加するトレンドは投資家から注目されており、自転車部品メーカー大手の「シマノ (7309)」の株価は、コロナ後に連日上昇して上場来高値を更新している。

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【通勤経路の自転車利用率を増やす考え方】

 自転車通勤の欠点は、職場の近隣に住む人でなければ実行しにくいことだが、通勤経路の一部を自転車に変えるだけでも、バスや電車の混雑率を下げることができる。これは「自転車交通分担率」という考え方で、欧米に加えて、日本でもコロナ後の通勤形態として普及していく可能性がある。

たとえば、電車を乗り継いで東京都心のオフィスに通勤している人の場合、都心の地下鉄エリアのみを自転車移動にすることで、満員電車の混雑を避けることができる。これを実現させるには、自転車専用道や駐輪場の整備が必要になることから、日本は全国を対象とした統計でも、通勤経路で自転車が使われる分担率は15%程度と低かった。しかし、コロナを機会として、自転車通勤に対する施策も充実していくことが予測できる。

国土交通省が2019年に取りまとめた、事業者向け「自転車通勤導入に関する手引き」の中でも、自転車は5キロ以内の都市内移動では、電車よりも移動時間が短縮されて、通勤者の健康増進、メンタル向上にも役立つことが解説されている。

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さらに、事業者が従業員に対して自転車通勤を推進することは、通勤手当の削減効果もある。同手引きでは、自転車通勤を推奨している事業者の通勤手当削減額は、1人あたり年間5.7万円という調査結果を出している。そのため、会社が通用自転車の購入支援をしても、自転車通勤者を増やすメリットはある。

自転車通勤導入に関する手引き(国土交通省)

東京圏における通勤電車の混雑率は平均163%という状況で、つり革に何とかつかまりながら、新聞を折り畳みながら読むことも困難な混雑度の中で毎日通勤している。しかし、3密を防ぐガイドラインのソーシャルディスタンス(約2m)を電車内で保つには、乗車人数を定員の20%程度にまで下げる必要がある。これは現実的には難しい目標であり、満員電車の代替手段として「自転車通勤者を増やすこと」は社会的な課題であり、政府主導で様々な施策が展開されていく可能性が高い。

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