見切り発車か!ドイツの「無限列車」の行方とは=『鬼滅の刃』
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見切り発車か!ドイツの「無限列車」の行方とは=『鬼滅の刃』

Kataho@フランクフルト

ドイツでは劇場版『鬼滅の刃』無限列車編の劇場公開が7週目を迎えています。実は、、、まだまだこれからなのです。という内容です。

『鬼滅の刃』といえば先日もUSJにアトラクションが登場すると発表があり、話題に事欠かない大ヒット作品なのは皆さんもご存知だと思います。

一方で海外に関連した話題では、4月に北米での大ヒットが報じられたものの続報はあまり聞かれないのではないでしょうか。

東宝と映画を配給するアニプレックスは5月24日にプレスリリースを発表し、世界的な興行の成功を報告しています。その中に、「興行成績が確認できている海外の国と地域」(参考:以下のスクリーンショット)の羅列がありますが、

ドイツは含まれていません。

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一体どういうことでしょう?

ドイツでは当初2月に映画館で公開する予定となっていました。(参考:ドイツのアニメニュースサイトの記事

ところが、ドイツでは新型コロナウィルスの感染予防対策の一環で11月からいわゆる「ロックダウン」に突入し、映画館は休業を余儀なくされていました。そして、ようやく劇場版『鬼滅の刃』の上映をスタートしたのは、実に5月20日のことでした。

では、その5月20日時点の上映会場マップを見てみましょう。上映会場マップは、ドイツ語圏の配給を担当するアニメ販売会社ペッパーミントの上映ブランド「アキバパス」が用意したものです。

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ドイツ、スイス、オーストリアにルクセンブルクを加えた各地で上映会場として掲載されていますが、非常に少ないです。さらに、5月20日に上映したのはほぼドライブインシアターに限られていました。

つまり、5月20日時点では、映画館はそもそもまだ再開していなかったのです。(実は北ドイツではリューベックの映画館で上映されていますが、それはリューベックがモデルプロジェクトとして映画館の営業を許可していたからでこれは例外というべきでしょう。)

ドイツでは映画館の再開を待たずして上映に踏み切ったのは、見切り発車だったのではと疑いたくなってしまいます。

配給元の発表を見ると、やむを得ない事情も見え隠れしてきます。

それは、ひとつには劇場版『鬼滅の刃』に関連して制作された無料冊子『煉獄零巻』の存在です。日本では劇場で配布されたと聞いていますが、ドイツでは映画の入場券を提示することで書店で受け取れるというシステムになっています。

実は配給元の「アキバパス」は今回の劇場版『鬼滅の刃』の上映に関連して、ドイツの大手書店チェーン「タリア」から協力を得て、受取先にわざわざ書店を選んでいたのです。「タリア」では、特設コーナーを作りマンガ版も訴求していくと事前の情報にはありました。つまりマンガ版との相乗効果を狙っていたのです。

以下のスクリーンショットは無料冊子が受け取れる書店のマップです。先の上映会場マップと比較してみてください。映画は上映してないのに、コラボする書店はこの規模で大きく展開しています。

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さらにです。ドイツでは『鬼滅の刃』の漫画版はMangaCult社がドイツ語版を刊行していますが、第8巻の発売が6月3日に迫っていました。第8巻といえばちょうど無限列車編にあたります。5月20日に上映を開始しなければ、書店側もコラボで期待していた漫画の販売機会も逃すことになりかねなかった、と見ることができます。(以下は8巻の発売を宣伝する出版社のツイート)

そもそも、ドイツでも日本のアニメ映画は近年、『天気の子』や『ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝』などが映画館で上映されて好評を博していますが、大手書店チェーンとのコラボは前代未聞だと思われます。

また、現在上映7週目ですが、コロナにより上映館が限定されているという状況を差し引いても、何度も上映されるのは異例の待遇だと言っていいでしょう。『天気の子』や『ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝』は基本的に単日ないし数日のイベント上映にとどまっていたことを考えると、レギュラー上映を成し遂げたのは快挙と言っていいかもしれません。

また、劇場版『鬼滅の刃』に関しては、ドイツ語圏オリジナルの公式グッズが制作、販売されているのも見逃せません。『鬼滅の刃』の朝食プレートは珍しいと思います。ドイツではFrühstücksbrettまたはFrüstücksbrettchenなどと呼ばれ、朝食時に使う個人用の「まな板」です。パンやチーズ、ハムを切ったりのせたりする作業を食卓で行うときに使います。朝食プレート自体は他の作品でも販売された事例がありますが、ドイツらしいオリジナル展開として紹介しておきます。

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さて、このようにして見てみると、ドイツにおける劇場版『鬼滅の刃』のマーケティングは、かつてないほどの規模で強力に展開しているのが分かると思います。しかし、同時にコロナによる映画館の営業禁止の影響を受け、その努力は空回りしているようにも見えるかもしれません。

ドイツにおける劇場版『鬼滅の刃』はこのまま不発に終わるのでしょうか?

筆者の見通しは明るいです。では、ここで今日現在6月25日の上映マップを見てみましょう。

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上映会場が大幅に追加されているのが分かると思います。ドイツでは感染状況の改善を受けて、6月中旬には北ドイツを中心とする映画館チェーンUCIが一斉に営業を開始し、その後も、ドイツの各地で存在する複数の映画館チェーンが再開を発表しました。

そしてその多くは7月1日に営業を再開し、劇場版『鬼滅の刃』を上映します。

無限列車は見切り発車だったのかもいしれません。しかし、本格的な「発車」は実は今からなのです。本作は当分はまだ話題を提供し続けることになるかもしれません。

というわけで、劇場版『鬼滅の刃』の海外展開におけるドイツの事情を補いたいと思い、紹介してみました。ファンの方だけでなく、業界の方にとっても参考になればと思います。

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タイトル画像:7月1日から劇場版『鬼滅の刃』を上映するフランクフルトの映画館のページからのスクリーンショット。


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ダンケ!
Kataho@フランクフルト
日独文化交流家(日本ポップカルチャー) ドイツ、フランクフルト在住。日本のポップカルチャーを通じたドイツでの文化交流を支援しています。活動での「気づき」や日々の情報収集で感じたことをドイツからお届けします。 https://twitter.com/sakaikataho