顧客からの評価を指標化するのは良いが、報酬と紐づけてはいけない
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顧客からの評価を指標化するのは良いが、報酬と紐づけてはいけない

遠藤 直紀(ビービット 代表)

「市場の飽和で選択肢も多い中、新規顧客を獲得するコストは既存顧客の維持にかかるコストの5倍とされます」

言われ始めて久しいですが、新規の顧客獲得に注力するよりも、既存顧客への価値提供量を増やして、満足してもらいながらLTV(顧客生涯価値)を高めるほうが合理的です。

価値提供量を増やす活動を促進するためには、現状の強みと弱みを知り、強化や改善の方針を策定する必要があり、顧客満足度指標やネットプロモータースコアなど、顧客からの評価を客観的に可視化する方法が開発されてきました。

頻繁に発生するコブラ効果

1800年代にインドを支配していた英国の植民地政府は、首都デリーのコブラを減らそうとして、コブラの死骸を持って来た人には報奨金を支払うという通告を出した。

当初、この計画はうまく運んだ。コブラの死骸は報奨金と交換され、コブラの脅威は治まりそうに思えた。だが、見えていることばかりが事実ではなかった。

抜け目のない数人の起業家が、コブラの死骸で大金を稼ぐ方法に気づいた。野心的な彼らは、いったい何をしたか。養殖場を作って、コブラを続々と増やしたのだ!

それを知った植民地政府は、報奨金制度を取りやめた。コブラの価値が急落すると、コブラ養殖場の主たちは、やむなくコブラを逃がした。そういうわけで、結局、デリーのコブラは逆に増えてしまった。

日経BP  マッキンゼー流 最高の社風のつくり方

ネットプロモータースコアに関する書籍「ネット・プロモーター経営」では、顧客からの評価を高める活動に注力している企業の利益創出量が高いことを紹介しています。その影響で、世界中の大手企業が、投資家向けにネットプロモータースコアを報告するようになりました。

投資家に向けて数値を報告する以上、経営陣は数値を高めていく必要があり、全社に対して、数値向上の圧力が掛かり始め、人事考課や報酬と直接的に結びつけられるようになりました。

その結果、その目的であった顧客により良い価値を提供することよりも、従業員は、残念ながら点数に関心を持つようになります。それが組織の目的とは反対の方向に向かっていたとしても、プレッシャーを和らげることができそうな最短の道を探し始めるのが常です。これがコブラ効果です。

顧客からの評価指標の活用の限定

監査のできない数値を投資家向けに報告することにはリスクがあります。投資家対応に活用すべき指標は、顧客生涯価値に直接的に紐づき、操作できない「顧客継続率」や「売上継続率」などが望ましいです。

米国では最近「売上継続率」を投資家向けに対して公表する企業が増えており、高い数値が、高い企業価値を形成するようになっています。

売上継続率の成長率は企業価値/売上の倍率と正の相関がある
Bessemer Venture Partners Cloud Indexより

そして顧客からの評価指標は、2つの目的で活用できます。

まず、より高い価値提供のための重要な情報源として利用するのが本筋です。

次に、従業員の働く意義のためにも活用できます。仕事の意義深さは、仕事が他の人々に及ぼす影響の度合いで決まります。仕事の意義深さを実感するためには、その仕事から顧客が得た価値を確認できることが必要です。

顧客からの評価指標は、顧客価値の改善活動と従業員の働きがいのための活用に限定するべきなのです。

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遠藤 直紀(ビービット 代表)

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遠藤 直紀(ビービット 代表)
エクスペリエンス設計を支援するビービットの代表( https://www.bebit.co.jp/ ) 鳥取県米子市出身、横浜国立大学経営学部卒業。TED 貢献志向の仕事( https://www.youtube.com/watch?v=FUTi1At5B-o )