産学連携は、「人」の認定の前に、連携方法の確立では

 まず、背景を知らない方に、なぜ大学が産学連携を行うのかを理由をいくつかあげたい。一つは、大学生・大学院生を企業でそのまま働ける即戦力として育成するために、民間企業と一緒に研究したい。他には、大学の研究に民間企業の研究と研究予算を取り込みたいなどの理由があります。

私自身、東京大学で産学連携のお手伝いを行っていますが、実は大学に「産学連携のプロ」を置くだけでは駄目だと思います。産学連携とは、大学と企業のお見合いなのですから、企業の方にも、「アカデミアとの連携のプロ」が必要でしょう。そして、民間企業と大学の連携の最大の問題は、得られた「知」の共有財産化の方法と、連携期間中の「給与などの雇用」問題があり、こちらの方が非常に大きな問題です。

大学は研究の成果を論文にしたいし、企業は特許にしたい。得られた「知」が、どちらも独占的に使いたいと思うでしょうし。つまり、このような「産学連携」の「連携方法」のコンセンサス作りが先に必要で、ボトムアップ方式に、「担当者」を置くことではないのです。

この問題は、大学の問題に感じるかもしれませんが、日本の技術力の低下の問題でもあります。たとえば、アメリカのMITは、どんどん民間企業と共同の取り組みを行い、大学で良い研究を行い、民間企業の技術力を高めるだけでなく、良い人材も輩出しています。従って、この問題を文部科学省の問題として片付けるのではなく、民間企業の研究部門の方たちでも議論し、解決策を模索することも重要です。ぜひ、民間企業の方たちの、議論を加速させて欲しいものです。この人材不足の時期には、働き方改革以上に、大学の研究機関と民間企業の協働は重要なテーマです。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO27223310R20C18A2CR8000/

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本間 充 マーケティングサイエンスラボ所長/アビームコンサルティング顧問
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