
ESGって? 日経電子版で学ぶ新社会人の基礎⑫
いろいろと聞いたことがないカタカナ語やアルファベットが並ぶ経済・企業ニュース。最近よく聞くキーワードに「ESG」があります。
次の記事を読んでみましょう。
「ESG投資」という文脈で使われることが多いようです。株主が「気候変動対策を」とはどういうことでしょうか。ちょっと考えてみましょう。
1.ESGとは?
まず、ESGとは何かを考えてみましょう。
E=Environment(環境)
S=Social(社会)
G=governance(企業統治)
この3つをまとめてESGと呼び、企業が配慮すべき事項として挙げられています。簡単に言えば、企業が社会に対して果たすべき役割です。
実はこれまでも企業はCSR(企業の社会的責任)というかたちでコンプライアンスの充実や社会奉仕活動、芸術への支援などを続けてきましたし、投資家もCSRが優れている会社に対してSRI(社会的責任投資)というかたちで応えてきました。
その上でESGは単に社会の中での役割だけではなく、それを実行しなければ、将来、企業として継続できない可能性がある、という考えを含むものになります。
E=環境では、火力発電などに頼らずクリーンなエネルギーを使っているか、脱プラスチックの潮流に乗っ取り再生可能な素材を使っているか、などが重視されます。
最近スーパーなどで「レジ袋は有料です」というところが増えていますが、これもEへの取り組みの1つです。
S=社会は社会の変化や要請にどう対応できるかです。
例えば女性活躍やダイバーシティについてどれだけ配慮しているかなどが見られます。
G=企業統治はきちんと株主や社会に対して情報開示できているか、経営へのチェックが働いているか、などが基準になります。
2.じゃあESG投資って何?
最初の記事にあったとおり、ESGという指標がよく使われるのは投資の文脈です。
割高な自然エネルギーを使ったり、コストの高い特別な素材を使ったりするのは、短期的に見れば企業の収益にマイナスです。ただ、気候変動などの影響で生活や環境が激変すれば、結果として現状のビジネスが成り立たなくなります。これ以上環境にマイナスにならないようにすること、気候変動が進んでも事業を進められるようにすることは長期的に見れば企業が今後も存続する大切な要素になります。
S=社会についても、教育や構造改革に多少コストや時間がかかっても、性別や働き方にかかわらず能力を発揮できる仕組みを作ることができれば、こちらも長期的に見て企業の強さになります。G=企業統治の面でも、情報公開をきちんとしている企業の方が投資家も安心してお金を預けることができます。
ESGの動きに呼応するのが保険や年金などの機関投資家です。長期的観点から投資する投資家にとって、企業が存続する可能性は極めて重要になります。また、通常の決算書がこれまでの「成績表」であるのに対して、企業の未来を予測する1つの指標になります。
個人投資家にとっても、長期で企業の成長に期待する積み立て投資などの場合はESGは1つの投資判断材料になります。
ただ、問題はESGは明確な数字を元に算出できておらず、投資判断が難しいという点があります。そのため、わかりやすい指標や指数を作る動きも活発になっています。
3.企業はどう取り組んでいるか?
では企業はどのように取り組んでいるでしょうか。
卑近な例で言えば日用品メーカーです。シャンプーや歯ブラシなどの日用品はプラスチックの使用が多く、地球温暖化や海洋汚染などにマイナスの影響があります。そこで、再生可能なプラスチックを利用したり、リサイクルを進めたりすることで環境への負荷を減らす取り組みを進めています。地球環境保護だけでなく、結果として企業としての評価も上げる効果があります。
ESGの広がりによって新たなビジネスも生まれます。
加工しやすく安価で便利なプラスチックですが、使用量を減らさなくても石油由来の素材を使わないであるとか、このプラスチックは自然の中で分解されます、といったプラスチックであればESGの一端を担うことができます。上のユーグレナの記事では藻や古紙などを活用することで、石油を使わずに安価にプラスチックを作ろうとするものです。再生可能な素材を利用したプラスチックで、価格競争力もある、という商品ができれば新たなビジネスが広がります。
ESGの背景には「国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)」という考え方があります。世界共通の目標のもと、環境や貧困、ジェンダーなど様々な課題を解決しようとするものです。経済活動を通じてSDGsを達成するESGにより注目が集まるとみられています。
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