長期の戦略であること、主力=only oneではないことに注意

経産省の有識者会議が、再生可能エネルギーを「主力電源」と位置付けたというのが大きな話題になっています。

ただ、現状政府が描いているエネルギーミックスでも「2030年には22~24%」の導入を目指すとし、原子力よりも多い数値を置いていました。一歩踏み込んだ感はありますが、それほど今までと何かが変わったという感じは私は持っていません。

それより注意しなければならないのは、これは長期的な戦略なので、実現するまでの間どうするのかということ。2012年7月に再生可能エネルギーの普及を応援するための制度(全量固定価格買取制度、略称FIT)を導入してからこれまでに国民が負担した再エネ応援のためのコストは10兆円を超えましたが、いま太陽光や風力が賄っている電気はだいたい7%程度です。これを主力に育てていくためには、今後も長い時間と莫大なコストが必要です。特にコストは、世界的には下がってきていますので、日本の再生可能エネルギーの値段を下げることが喫緊の課題。

そしてもう一つ注意しなければならないのが、主力=only oneではないということです。蓄電技術がどれほどの早さでコストダウン・大容量化に成功するか次第でもありますが、人間がコントロールできない太陽光・風力の電気をうまく使いこなすためには、人間がコントロールできる火力発電を調整役として一定程度維持しなければなりません。この火力発電の低炭素化をどう進めるのか。また、再エネ以外の部分が全て火力発電でよいのかといった問題、要は、原子力をどうするのかという点も重要です。

自由化し、これだけ事業環境が不透明ななかでは、以前から繰り返している通り、原子力事業にチャレンジする民間事業者はいなくなります。それでも国として必要だと判断される場合にどうするか。本来、自由化をする前に徹底的に議論されておくべき課題をごまかして日本は自由化しました。この状況からリカバーしていくのかは容易ではありません。

本当に、責任あるエネルギー政策をお願いしたい。といいつつ、自由化しちゃってますから、こんな戦略、国が描いた単なる「理想像」なんですけどね。描いたビジョンに誘導していく責任が政府にはありますが、担保できるわけではない。

事業者もいつまでも政府の言うことを気にしていないで、「自由化しましたよね」と言えばよいのに、いつまで気にしているんだか。

https://mainichi.jp/articles/20180413/ddm/005/070/100000c

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