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「時の結晶」と名付けられた圧倒的な美。いまここでしか見られない展覧会が開幕

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

ようやく猛暑も過ぎ去り、街を通り抜ける風にも秋を感じる今日このごろ。この芸術の秋にぴったりな展覧会が10月2日より開幕しました。前日のプレビューに行ってきましたので、さっそくレポートしたいと思います。

 1847年にパリで創業され、世界を代表するジュエリーブランドとして知られる「カルティエ」。その1970年代以降の現代作品にフォーカスした世界初の展覧会「カルティエ、時の結晶」が、東京・六本木の国立新美術館で開幕した。会期は12月16日まで。

これまで、カルティエは世界の著名な美術館で展覧会を開催してきたが、今回の展覧会では、現代作品を紹介するだけあって、世界中の個人所蔵の作品を展示。総出品数の半分以上を個人蔵が占めるという。

 また、従来のカルティエ展は、その歴史に沿って語られる展示構成が中心だったが、本展では「時間」を軸に、色や素材、フォルムといった単位から展示を構成。杉本博司と榊田倫之の新素材研究所が初めて美術館展覧会の構成を手がけている。

「古い素材こそが一番新しい」という視点の建築事務所である、新素材研究所。伊勢丹サローネや銀座SIXのラウンジ、自身の江之浦測候所などでその独自の美意識を感じ取ることができます。今回の展覧会でも随所に「杉本節」が発揮されており、カルティエのジュエリーが持つ美とのコラボレーションも1つの見所でしょう。

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会場を入ると、杉本の作品である《逆光時計》(2018)が出迎えます。これは文字通り反時計回りに「逆進」する時計。宝石の元になる鉱石は、途方も無い時間をかけて自然の力により形成されていきます。まさに我々のいる現代から時をさかのぼり、宝石つまり物質的世界へと逆進していくのがこの展示会の構成です。

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次の出てくるのが「時の間 ミステリークロック、プリズムクロック」。円形のスペースに、今回のために特注した織物からなる12本のベールが伸びています。この場所自身が時計を感じさせる空間となっており、その中にミステリークロックが鎮座しています。ミステリークロックというのは、時計機構が一切見えない、あたかも針が浮いているかのように見える時計です。まさに、ミステリー! これはルイ・カルティエとメゾンの時計職人、モーリス・クーエの手により1912年に発表されてから、一度も途絶えることなく製造されてきました。メゾンのもつ技術力と芸術性を象徴するかのような作品群です。

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その後は、圧倒的な分量の展示が続きます。ため息しかでない。。。

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特に印象的なのが、展示に使われている台座や什器。上の写真がわかりやすいと思いますが、色合いの似た鉱石の上に宝石が乗っています。金銭的な価値で言えば、もちろん雲泥の差があるわけです。それどころか、宝石も元を正せば鉱石です。それが人の手により磨かれ、美を見いだされ、かくも素晴らしいジュエリーとなりました。その悠久のときに思いを馳せながら、次々と現れる圧倒的な美に酔いしれます。

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ネックレスをいだくトルソーの存在感!これは屋久杉や神代杉などを素材とし、仏師に特注したものだそうです。

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樹齢1000年以上の屋久杉とのコラボレーション。小さなジュエリーが放つ存在感をうまく表現しています。

カルティエが現代作品にフォーカスした展覧会を開催するのは、世界初。写真家・アーティストとしても有名な杉本博司が展覧会の構成を手掛けるのも、初。展示の半分以上が個人蔵であり、杉本自身の所有する国宝級のアンティークも什器として展示されていることから、この展覧会が他の場所へ巡回したり、ましてや国外に出る可能性はゼロに近いでしょう。

いまここでしか見れない、貴重な機会。悠久の時が人の力を得て、ジュエリーという結晶に帰結したそのすべてを感じられる展覧会。運良く見られた人には、忘れられない思い出となるでしょう。

カルティエ 時の結晶
Cartier, Crystallization of Time

2019年10月2日〜12月16日まで、国立新美術館で開催です。

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※ 掲載写真はすべて筆者撮影。iPhone11 Proすごい。

#COMEMO #NIKKEI

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