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STEM教育。そのまえに「科学」への勘違いを無くそう。

色々な世代やバックグラウンドの人とお話をしていくと、なんだか話が噛み合わないことがある。よくよく聞いてみると、ある言葉の意味が全然違っていたなんていうことはありふれた話だ。

たとえば、今「パンツ」という言葉、それがズボンを指しているのか、下着を指しているのかが同じ言葉だけど意味が違ってくる。一方が下着の話で一方がズボンの話をしていたら噛み合わない。

最近、AIブームで、コンピュータサイエンスへの関心が高まり、テクノロジー教育への関心が高まっている。科学(Science)、テクノロジー、エンジニアリング、数学(Mathematics)の頭文字をとって、STEM教育と言ったりする。

もう勉強をやっていなさそうな人が、STEM教育は重要だ、いやそれよりもアートだ、教養だ、リベラルアーツだなどといろんなことが大事だと思われて勉強させられる人たちも大変だなぁと思う。

さて、この「科学」という言葉だけど、特定の世代や特定の種類の人々と噛み合わないことが度々ある。どうやら言葉の意味を共有できていないように思えるのだ。それこそが「科学」教育の失敗なのだろうけど。

科学というのは、自然哲学の流れを組む。いったいこの世の中を動かす仕組みはどうなっているのだろうと、「センスオブワンダー」を働かせて、自然の仕組みを解き明かしていくことを目的とした学問領域だ。

かつての自然への向き合い方は、宗教的教義や昔の哲学者の論考から始まる理性主義的な代物だった。聖書にもこういうことが書いてあるし、アリストテレスもこう言っている。だから、自然の性質はこうなのだ。という理屈だ。彼らにとっての正しさは、理屈の連鎖による正しさで、そうするとあたりまのことながら、空理空論になってしまい、結局のところ真実から遠ざかってしまうことも多かったのだ。

一方で、科学を科学たらしめたのは、「経験主義」的なものだった。過去の書かれたものよりも今、実験を行い、再現できるようなことだけを知識として積み重ねていき、発見していくというプロセスだ。このように、わからないものに対して、観察、仮説構築、実験と検証を繰り返すこういった営みが現在、科学と呼ばれているものだ。これには人間的直感や理屈、行動を総動員しながら、さらに自分自身を疑えるだけ疑うという慎重さという相反するように見える知性を総動員したものだ。

そして、常に「疑える状況を用意すること」(反証可能性)こそが科学を科学たらしめるテーゼだったりする。なので、学会というコミュニティや論文と査読というプロセスが「まだ誰も反証できていないという意味での『正しさ』」を担保している。

ところが、科学というものを「絶対の正解には、決してたどり着けないが、少しでも正しいと思われるところへ向かおう」とする「人間的なプロセスやコミュニティ」だという理解が社会にあまり認知されていないのではないかと思うことが多々ある。

それは、急速な工業化が進んだ前世紀、科学という名のもとに様々な問題が引き起こされてきたこと、そしてその批判的精神を汲んだフィクション作品が多かったというのもあるのではないかと僕は睨んでいる。

たとえば、特撮怪獣は、核爆弾の副作用や公害問題によって生まれた怪物だし、オゾン層はエアコンにより破壊されて、地球温暖化が進んでいる。だから、自然に回帰しないと人類に未来はないよといった物語のプロットだ。

もう少し昔は、科学を賛美しているように見えるSFも多かったようだ。チューブ状の高速道路を空飛ぶ車が走り、銀色の服を着た宇宙旅行者。これもよく見る世界観だ。この時代の反発なのだろうか。

どちらにしても、昭和的なカルチャーの残滓からくるものだ。

さておき、科学という言葉は前述したような自然の性質に対する発見的なプロセスや学びと反証のコミュニティだ。

ところが、そのような捉えられかたではなくて、「合理主義の非人間的なもの」「自然と相対する概念」「健康に悪いもの」「感覚を重視しないもの」「感情を持たない冷たいもの」という本来的なものとはかけ離れたような捉えられ方がされていることがあるように思える。

たとえば、「科学では割り切れないものがある」という使い古された表現もそうだ。現代の科学ではわからないけど、そこに不思議があるなら常に科学的プロセスは意味を持つはずなのだ。

STEM教育は大事だ。だから、学ぼう。

いつでも間違えるのだと真実に向き合い、現実を少しでもよくしていく姿勢が科学的滋養なのだ。



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