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ロジカルシンキングとデザインシンキングは、相反するものではない。問題解決プロセスの光の当て方の違いである

ここ数年、「デザインシンキング」や「アート思考」が、バズワードとしてビジネスシーンで流行り言葉になっている。日本人はこういう流行り言葉が大好きで、「ロジカルシンキングは、もう古い!これからはイノベーティブなデザインシンキングでいかなければ!」といった、その意味が分かっているのかいないのかわからないような、意識高い系発言も散見される。そこで、本稿では、ロジカルシンキングとデザインシンキングの関係性について考え、ロジカルシンキングは本当に古いのか(デザインシンキングは本当に新しいのか?)ということを検討していきたい。

デザインシンキングの意味を再考する

デザインシンキングとは、「実践的かつ創造的な問題解決もしくは解決の創造についての形式的方法であり、ソリューション・ベースドもしくは解決志向の思考方法の一つ」であるとされる。この定義からも分かるように「解決」に重きを置いた考え方だ。

従来のロジカルシンキングは、「問題の解決を生み出す際にその問題のパラメータを徹底的に定義することから始められる」とされ、その対照から、ロジカルシンキングは、問題の特定に重きを置き、デザインシンキングは問題の解決に重きを置くと主張されることが多い。

このように考えていくと、デザインシンキングは、問題の特定ではなく、問題の解決に重きを置かれているので、「解決策が見つかってすっきり!」「イノベーティブな解決策が見つかる!」と、なんか良いことだらけのように思える。しかし、これはデザインシンキングに対する誤った幼稚な見方だ。

そもそも問題の特定なしに解決策は見つからない

およそ世の中の「解決策」は、「問題の特定」によってなされる。だから、「解決」という言葉は何の意味もなさず、「問題解決」という言葉により、「解決」に意味が付与される。

デザインシンキングが「解決」に重きを置いていることに間違いはないのだが、デザインシンキングの思考プロセスはそれだけではない。それがロジカルシンキングではなく、仮に経験則によるものだったとしても、潜在的に「問題の特定」があって、それを解決するためにデザインシンキングが価値を発揮するのである。

一方、ロジカルシンキング(特に日本の場合は2000年代以降、外資系コンサルティング会社により普及された)では、現状分析を行う際にピラミッド構造を構築し、現状をMECEに分解し、上位概念と下位概念の因果関係を明らかにする。これは、ある問題に対する原因を特定する、言い換えると、「問題の真因を特定する」ものだ。もっとも外資系コンサルティング会社では、ロジカルシンキングを、問題の特定だけに使うわけではない。経営コンサルティングの使命は、問題解決なので「問題の特定」⇒「解決策の提示、実行」になる。

日本でロジカルシンキングが機能しないのは、日本企業の意思決定力の不足が原因

では、なぜ巷見られる言説では「ロジカルシンキングは問題の特定に重きを置く」と誤解されるのか。それは、ロジカルシンキングで問題を特定して、解決策を提示しても、日本企業の経営陣が、それに基づいた意思決定をしないからだ。

「いやぁ、おっしゃることはごもっともなのですが、いろいろ組織間のパワーバランスもありまして。いろいろ緻密に検討しないと、あちこちでハレーションが生じます。急に方向性を変えるのも勇気が必要ですし。まずご検討頂いた結果をありがたく頂戴し、社内で検討し、今後のアクションを考えていきたいと思います。この度は、誠にありがとうございました」

外資系コンサルティング会社が日本企業にコンサルティングを提供し、最終プレゼンを行った際に、日本企業の経営陣から頂くことが多い言葉である。このような状況では、ロジカルシンキングは、問題の特定には役に立ったが、解決には至らなかったということになる。この最終報告に居合わせた日本企業の若手ビジネスパーソンは、フラストレーションをため込んでいただろう。

現在のデザインシンキングは、フラストレーションのはけ口に過ぎない

2000年以降日本で流行したロジカルシンキングは、こうして若手ビジネスパーソンのフラストレーションを蓄積していった。そこに登場したのが、解決に重きを置いたデザインシンキングである。日本のロジカルシンキングでは、なかなか上手くいかなかった解決を行えるのではないかと期待が高まったわけだ。

「ロジカルシンキングなんて古臭い考え方はダメだ!」「これからは、新しいデザインシンキングだ!」ここ数年、若手ビジネスパーソンからデザインシンキングが高い支持を集めるようになった。

ロジカルシンキングもデザインシンキングも同じプロセスの光の当て方が違うに過ぎない

しかし、先に検討したように、ロジカルシンキングもデザインシンキングも「問題の特定」だけしているわけではなく「解決」だけしているわけでもない。あくまでも行っていることは「問題解決」である。

日本では、ロジカルシンキングで「問題の特定」に光が当てられがちであり、デザインシンキングで「解決」に光が当てられがちだっただけだ。問題を解決するうえでは、両方とも必要なものなのである。だから、ロジカルシンキングとデザインシンキングは、相反するものではない。そして、古い、新しいという関係にもない。

したがって、若手ビジネスパーソンにおすすめしたいのは、ロジカルシンキングとデザインシンキング、両方のスキルを身につけることだ。両社は、問題解決プロセスの光の当て方の違いに過ぎない。およそビジネスパーソンの最終ゴールはロジカルであることでもなく、デザインでもなく、問題解決能力を高めることである。

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名古屋商科大学ビジネススクール 教授。専門は、経営戦略、マーケティング、デジタルマーケティング、ラーメン。日経COMEMOキーオピニオンリーダー
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