プライバシー重視を掲げるフェイスブックのしたたかな新しいビジネスモデル
3月6日にフェイスブックCEOマーク・ザッカーバーグ氏により投稿された『A Privacy-Focused Vision for Social Networking(プライバシー重視のソーシャルネットワークのビジョン)』に関して、国内でも「プライバシー重視」へ方針転換、という形でどちらかというと好意的、そして時代の空気を反映している動きとする見方が多く紹介されています。
自分自身も第一報のニュースを見た時には前向きな印象を抱き、以下の投稿を書いてみました。
オープンからクローズへ:プライバシー重視を宣言するフェイスブックがもたらす潮目の変化(2019/3/7)
最初の報道から時間が経ち、いくつかの関連記事を読んでみることで、以前とは少し異なる、どちらかというとザッカーバーグ氏の「したたかさ」が際立つ分析が数多く展開されています。概要だけご紹介したいと思います。
①ストラテチェリー(Stratechery) ベン・トンプソン氏の分析
・フェイスブックにとっては見事なビジネス戦略。
・既存のターゲティング広告をやめるとは一言も明言しておらず、基本的にはSnapchatが既に成功を示している1対1のやりとりで、24時間後に消滅し、永遠にアーカイブされないメッセージングサービスを既存ビジネスの追加増強として注力していくことを示している。
・今回の「方向転換」のブログはPR的な観点からも非常に好意的な印象を与えることに成功している。
・企業が自社にとって不利益となることを行うという期待を持つべきではない。
② The Economist誌の分析
・メッセージ内容は暗号化されたととしても、誰が誰に、いつ、どのくらいの時間やり取りしているかなどのデータは取得可能。したがって広告ビジネスも展開可能。
・暗号化することで今までのようなフェイクニュース、ミスインフォメーション、ヘイトコンテンツなどの投稿監視のコストを削減する理由になりうる。
・メッセンジャー、インスタグラム、WhatsAppを統合することで、将来的に規制当局から会社分割を命じられても分割させるのが困難になりうる。
・インドで最も利用されているWhatsAppでの決済サービスは現在既に構築済みで承認待ちの段階。デジタル決済がもたらす利便性が今後巨大マーケットでどのように導入されるかが今後の新しいビジネスモデルの試金石となる。
③ Kara Swisher 氏(Recode共同創業者&ニューヨーク・タイムズコラムニスト)の分析
・フェイスブックは単にスナップチャットの最も優れたアイディアを万引きしただけ
・マーク・ザッカーバーグ氏をよく知る人によると彼は「価値(Value)」よりも「データ(data)」に基づいて判断をする人物である。
・ザッカーバーグを裕福にそして強力にさせたフェイスブックは既に肥大化し、過度にシェアが行われ、フェイクニュースが溢れ、ロシアに干渉され、非常に脆弱になっているというデータを見たのではないかとスウィッシャー氏は指摘。
・かつてビル・ゲイツがスティーブ・ジョブズの優れたアイディア、デザインを「盗んだ」ように、マーク・ザッカーバーグはSnapchat創業者であるエバン・スピーゲル(Evan Spiegel)の1対1で時間と友に消滅するというメッセンジャーサービスのアイディアを盗み、大きなスケールで展開しようとしている。
以上、多様な視点から今回のザッカーバーグ氏の宣言を見直すことで、新たな視点、今後の注目ポイントも見えてきそうです。個人的にはスナップチャットやストーリーズの可能性を自分自身体感出来てないことに気付きました。将来のコミュニケーションの成長分野、ということで改めて注視してみたいと思います。また、秘密裏に増強、推進されているフェイスブックのブロックチェーンチームの動向も併せて注意しておきたいところです。
なお、先週末の時点でのフェイスブックの株価は以下の通り。今後どのような動きを見せるのか、こちらも気になるところです。