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SaaS事業で売上1000億円を突破する方法

拡大するSaaS市場

サブスクリプション型のソフトウェアサービス、いわゆるSaaSの市場規模は年々拡大しています。

日本のSaaS市場は年平均成長率約12%の勢いで成長しており、2023年には約8200億円へと拡大し、パッケージソフトウェアとほぼ同等の規模になる見込みです。

さらに、海外のSaaS市場は日本を上回る年率16%で拡大しており、2022年までに約15兆円に到達する見通しで、これから起業する場合、とても魅力的な市場になります。

SaaS業界レポート2019販売開始 - 国内市場は2023年8,200億円規模へ

しかし、拡大するSaaS市場だからといって、事業が簡単に成功するわけではありません。大きく成長しているSaaS事業も、多くの失敗を乗り越えて実現しているものです。

10億ドルの会社を築き上げる方法 ~ The Climb

米国セールスフォース社の創業期を支え、その後、SaaS事業を支える請求システムを提供するzuora社を創業し、これまで順調に成長させているCEOのTien Tuoさんは、多くの人がSaaS事業を成功させられるように、ご自身の経験を方法論にまとめられました。

SaaS市場そのものを切り開いてきたセールスフォース社の経験だけでなく、再度、改めてSaaS事業をゼロから作り上げた過程を経られたことで、再現性が高く落とし込まれた方法論になっています。

特徴は、SaaS企業が成長する中で、それぞれの売上規模によってフェーズを切り、それぞれの発展段階によって、重視する点が全く異なることです。

売上規模によって会社を生まれ変わらせるものとして考えた方が良い、とまで言い切っています。

これからSaaS事業の起業を考えていらっしゃる方や、すでに事業を始めて日々悩んでいる方には、とても参考になるはずです。

■ アイデアの証明(年間売上0~1億円)
事業アイデアが顧客に受け入れられるかどうかを証明するフェーズ。

製品はプロトタイプでも良く、価格もまちまちで良いです。

自分たちの事業アイデアは、机上の空論ではなく、実際にお金を払うに足るものであることを実証します。

■ 製品の証明(年間売上1〜3億円)
顧客のニーズを満たすには、どのような製品であるべきかを見定めるフェーズ。

顧客との対話を通じて、誰に対して、どこまで製品を拡張していけば満足してもらえるのかを見定めます。

その結果、誰向けに製品開発を進めて行くのか、そしてどんな機能を優先して作りこんでいくのかを明確にしてロードマップを策定します。

■ 市場の証明(年間売上3〜10億円)
市場規模を計算し、自社の市場を選択するフェーズ。

この段階まで来ると、市場のことがわかるようになっているはずです。どの程度の数の潜在顧客がいて、どの程度の価格であれば購入してもらえるのかの肌感がついてきていますので、今後展開していく市場を決め、規模を算出します。

これまでのフェーズにおける市場規模計算は、数字遊びにすぎないので見直すことが必須になります。

ここで1000億円の市場規模が見込めず、かつ売上目標を下げないのであれば、エリア展開やターゲット市場の変更を模索しなければなりません。

■ ビジネスモデルの証明(年間売上10〜30億円)
利益を創出するモデルを作り上げるフェーズ。

ここまでは、組織や活動の規模が限られていたため、赤字の規模も少額となります。投資資金に基づきスピードを重視して、赤字をあまり気にせずに事業を拡大することができました。

しかし、売上が10億円を超えてくると赤字の規模も同様に拡大するため、利益を出す算段をつけなければなりません。

顧客を獲得する単価は収益性を考慮して適切なのか、解約率を抑えることができているのか、開発費用は過大になっていないかなど、SaaSならではの指標を計測し、活動を適正化しつつ利益の上がるモデルを確立します。

■ ビジョンの証明(年間売上30〜100億円)
大きなビジョンを語るフェーズ。

ここまで売上規模が拡大すると、一般的には株式を公開し、これまでよりもリスク選好度合いの低い不特定多数の投資家に支えられるようになります。

そこでは組織の長期的な継続性に対する説明責任が発生し、今後着実に企業が成長していくストーリーを納得してもらえるまで語り続けなければなりません。そして、なぜこの企業が社会にとって必要なのかを明確にする必要があります。

このフェーズを突破するには、通常3~4年を要します。

■ 業界の証明(年間売上100〜300億円)
エコシステムを作るフェーズ。

売上規模の小さいSaaS企業が、プラットフォーマーとして喧伝する事例が散見されますが、最低限必要な顧客規模を獲得していないと、他社にとって旨みのある環境を構築することはできません。

売上が数百億円規模になると、他企業を巻き込んだ活動が可能なります。ここでプラットフォーマーとしてどういった仕組みを作り、どう振る舞うべきかといった検討が開始できます。

■ 会社の証明(年間売上300〜1000億円)
いかに世界をより良く変えていくかを考えるフェーズ。

売上が300億円を超えると買収されづらくなり、世間一般にも社名を知られるようになってきて、一定期間の活動が担保されるようになります。

自らの組織の価値を証明ができるようになり、組織としてどういった立ち位置で、どう世の中を変え、後世に何を残すのか考えるべき段階にやっとたどり着いたことになります。

THE CLIMB 〜 頂上を目指して 〜「10億ドルの会社を築き上げる方法」

多くのSaaS企業が、早すぎる段階でプラットフォーマーを目指したり、収益性を考慮する傾向にあります。

どの段階で何を検討するのべきかを知ることは、活動の効率性を高める上で有益です。この方法論を一つの道しるべとして利用していきましょう。

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