働きたい人もいれば家事育児に専念したい人もいるのになぜ統一させたがる?
この記事をまとめると、
と書いてあるのだが、なぜ「女性の選択の問題ではなく男性の問題」と断定できるのか不思議だ。繰り返し言っていることだが、「女性は何をおいても本当は働きたくてしょうがないのに、いやいや家事や育児をさせられているのか?」問題をちゃんと整理してほしいのである。
別に夫婦共稼ぎを否定したいのではない。しかし、同時に専業主婦家族も否定しない。共稼ぎであろうと、専業主婦世帯であろうと、どちらの夫婦も「共働き」であるからだ。外で働いて稼いでなければ共働きではないという考え方の方がおかしい。なので私は、夫婦共に働きに出て有業者として稼いでいるのは「共稼ぎ」、一方が無業者であっても、夫婦役割分業が夫婦の互いの信頼と合意の下でやられているならそれは「共働き」夫婦と定義している。つまり、二人共に外で働いていようといまいとすべての夫婦は共働きである。
その前提に立った時に、「本当はすべての女性がキャリアを実現したいのだから」という一部の人の意見を全体化し、「女性が働く環境を整備せよ、そして女性は全員妊娠中も出産後も子どもが乳児でも働け」という一方的に押し付けを生むことは果たして妥当なのか?という話をいつも問題にしている。
働く環境を整えるというが、それ一部の東京の恵まれた大企業以外に本当にできんのか?と問いたいわけですよ。それに、職場の環境が整ったところで、個々の夫婦によってどちらか一方が子育て選任をしたい、または、しなければならない事情だってあるはずなのに、まるで戦時中のように「お国の為に女性も全員働け」という大号令を出すわけ?
百歩譲ってそういう意見があってもいいが、ではなぜ今でも専業主婦世帯は3割をキープしているのか?という現実を認識した方がいい。
実際に、結婚後妻の妊娠出産子育て期に夫の一馬力が多くなるのは事実で、それも夫に潤沢な年収がある夫婦ばかりではない。たとえば、夫の年収が300万でも子育て期間中妻が専業主婦になるケースは夫婦の6割を超える。
…というと、「だから会社を辞めないでずっと共稼ぎすればいいじゃない」という声が聞こえるのだが、それはマリー・アントワネットの「パンがなければケーキを食えばいい」という言葉と同等、あまりに自分以外の環境を知らなさ過ぎるというものだ。そんな記事をプレジデントに寄稿した(毎度のことながらタイトルは私がつけているものではないので無視して、内容を読んでいただきたい)。
毎度、これに対しても400件以上ものコメントを頂いた。
相変わらず「夫婦揃って正社員で定時退勤出来れば共働きなんて簡単」という予想通りの反応がくるのだが、二人そろって正社員とか、定時退勤できるとか、それができているあなたが相当恵まれた環境にあるということに気付けという記事なんです。
記事にもちゃんと書いてあるのに、読まないのか、理解しないのか…。本当に自分と関係ないものは目に入らないのだなあ。
コロナ禍でのリモートワークの話題でもさんざん触れたけど、東京の豊かな大企業勤めの正社員だけが働く人ではない。むしろリモートワークなどでは仕事にならず、雨の日も風の日も外に出て働かなければいけない人たちが6割もいる現実を知らないといけない。そしてそういう人たちの働きで自分らの生活が成り立っている。
口では「エッセンシャルワーカーを大切に」などというくせに、エアコンのきいた高層ビルの上から見下している心の奥底が透けて見える。まるでフードデリバリーの人の服装をバカにしたあの上級国民のように。
誰もが福利厚生のしっかりした、育休制度や復職制度も充実した一部の大企業の正社員ならこんな構造は発生しない。年収300万に満たない未婚男性が49%もいるのが今の日本の現実であることは、せめて他人事でもいいから認識しておくべきである。
そもそも論として、メディアとかの論調は「女性は社会でバリバリ働きたいのである」みたいなものに偏り過ぎだと私が疑問視するのも別に単なる感想を述べているのではない。
ソニー生命の2020年調査によれば、「今後もバリバリとキャリアを積んでいきたい」思う女性は34.2%。
一方で、「本当は専業主婦になりたい」が3割いる。20代にいたっては41.7%が専業主婦になりたがっている。
キャリア志向3割、専業主婦志向3割、と実にバランスでとれている。そして、その志向は現実においても反映されている。プレジデントの記事にも掲出したが、フルタイム共働きの割合は35年前も前からほぼ3割で変わらず推移しているということだ。ちなみに、パートもしていない専業主婦の割合もほぼ3割である。
つまり、キャリア志向の3割の女性は昔も今も変わらず正社員としてバリバリ働いているし、専業主婦志向3割の女性は専業主婦をしているということになる。実に希望通りではないか。それに何の問題があるのだろう。
むしろ、今後は専業主婦志向の3割でさえパートに行って家計を支えないといけなくなるのだろう。専業主婦が減っているとよくメディアは言うが、それはパートもしないでいい主婦が減っているだけであり、これは逆に言えば、夫の所得だけでは家計が成り立たない夫婦が増えていることを意味する。注目すべきは、専業主婦が減ったことではなく、妻のパート収入がなければ生活が成り立たない家庭が増えたことの方である。
こんなコメントをいただいた。
この方が、自分の年収400万で120万の夫と結婚されているなら、「おっしゃる通り」といいますが、決してそうではない。実際、妻の年収が夫を上回る夫婦は1割しかいない。世の中の現実がそうなっているのは一体なぜなのか?とこの方は思っているんだろうか?
そもそも、なぜこの方は「夫に経済的に依存していくことが前提の結婚観って、あまりに古臭くないですか?」と怒っているのだろうか?夫婦合意ならそういう結婚観があってもいいんじゃないの?法律違反でもないんだし。
男女平等戦士は、物質的に平等であることしか視野に入らなくなっているケースが非常に多い。個人がそうだけなら別にご勝手に、という話なのだが、「私がそう思うんだから正しいの。私の正しいにみんなが統一しないのはおかしい」と叫び出すからおかしなことになると言っている。
それがこの記事に書いた「正義の人の狂気」なのだ。
お前の正義はわかったから、まず現実を知ろうぜ。