外国人労働者は人手不足解消の救世主となるのか?
人口減少と少子高齢化によって、生産年齢人口が急激に減少する中、人手不足問題の解決として外国人労働者が期待されている。政府方針として2019年からは従来よりも幅広い分野で外国人を受け入れることを決め、外国人労働者受け入れは加速していくことが予想される。そのような中、日経新聞の外国人依存度のランキングは、今後の日本の労働市場を考えるうえで面白いデータを示している。特に、特徴的なデータの傾向を4つの論点にまとめた。
1.金融・保険と公務以外で増加する外国人雇用
今や、首都圏はもちろん地方都市でも外国人を見かけない日がないほど、日本企業の労働力として欠かすことのできない存在である。データによると、この2年間での伸び率は2.1倍と倍増している。伸び率が2倍以下の産業は19産業中8産業しかないが、そのうち6産業(「製造業関連」や「教育・学習支援」など)はそもそも外国人比率が高い。そのため、「金融・保険」と「公務」以外の産業では外国人の積極雇用が進んでいることがわかる。
2.伸び率が高くとも外国人労働者比率の高い産業に大きな変化はない
外国人の雇用が特に増加業種をみてみると、やはり人手不足が問題視されている業種が目立つ。第1位が「漁業」、第2位が「建設」、第3位が「運輸・郵便」、第4位が「農業・林業」、第5位が「医療・福祉」と、通常業務を行う上で大量のマンパワーが必要だが、日本人の応募者が少ないために採用が困難な業種が並んでいる。しかし、外国人労働者比率の高い10業種をみてみると、「食料品製造」や「繊維工業」、「輸送用機械器具製造」などの第2次産業に関連した業種が並び、2009年と2017年の間に顔ぶれの変化はない。そのため、外国人労働者比率が急増している業種では、人手不足問題が解決されない限り、まだまだ高い増加率が継続するだろうと予想される。
3.高度な専門性を有した外国人をどのように採用するか?
IT業界のエンジニアや金融のフィンテック関連人材、AIやロボティクスなどの研究・開発職をはじめとして、高度な専門性を有した外国人プロフェッショナル人材はこれまでの政府方針でも積極的に雇用していくように門戸が開かれてきた。しかし、このような人材が多く働く「情報通信」、「金融・保険」、「学術研究」などの業種は、まだまだ外国人労働者にとって魅力的な労働環境と認識されていないようだ。これらの業種は、全体平均の2.1倍よりも低い伸び率であり、最も割合の多い情報通信であっても19業種中第9位と、多いとは言えない状況にある。
高度な専門性を有した人材の人材獲得競争は、世界的な問題でもある。優秀な人材を獲得するために、世界中の企業が人材の奪い合いをしている。そのような中、日本企業にとって優秀な外国人人材を獲得するための採用戦略は大きな経営課題となっている。
4.3大都市圏に集中している外国人プロフェッショナル人材
また、外国人プロフェッショナル人材の活躍する地域も限定的だ。都道府県と業種の掛け合わせでみてみると、外国人労働者の総数も割合も、その多くが東京・愛知・大阪の3大都市圏で占められている。しかし、地方都市におけるインバウンド観光の成長にみられるように、地方都市にとってもグローバル化への対応は大きな課題である。地方都市が大都市圏に依存しない自立した経済圏を確保するためには、外国人プロフェッショナル人材の受け入れも積極的に行っていかなくてはならない。
一般的に人手不足問題という言葉には、2つの社会課題が混在して使われることが多い。
1つは、日本人労働者からの人気がなく、求人を出しても応募が集まらないという問題だ。第1次産業系の業種や「運送・運輸」、「建設」、「医療・介護」などの業種は、マンパワーが足りず、日常業務を行うことが困難なほど、人手不足が深刻な問題となっている。もう1つは、経営戦略上のニーズによって、海外の労働市場から希少性の高い専門性を有した人材を獲得しなくてはならないという問題だ。AIやデータアナリティクスに代表される専門性は、特別な教育訓練を受けている必要があり、その希少なスキルを求めて、世界中の企業で人材の獲得競争が行われている。
これら2つの社会課題の解決策の1つとして外国人労働者が期待され、データが示す通り、ここ数年で外国人労働者の数は急増している。しかし、数は増えているものの、受け入れ態勢の構築やダイバーシティ・マネジメントの経験不足など、まだまだ課題が多いというのが現状だろう。日本経済が縮小傾向にある中、都市部か地方か、大企業か中小企業かといった状況に関係なく、すべての企業や自治体が外国人労働者との新しい働き方の構築が求められている。
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/dependence-on-foreign-workers/