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人命か、経済か、ではなく

徐々に病床が逼迫してきましたね。まだブレーキを踏めていないので、これから2週間は感染が拡大するのでしょうか。そうなると東名阪などいくつかの地域で病床が溢れそうです。統計上いまのところ病床は余っているように見えますが、既に東京では宿泊療養向けに確保したホテルの部屋が溢れたのか、ホテル療養よりも自宅療養が多いという状況が続いています。

ソーシャルメディアのタイムラインを見て、発熱して息苦しいがコロナ対策の番号には繋がらず、急患で触診してもらったら風邪と診断、CTとか撮ってもらえず心配なので明日また病院にいく、という友人の書き込みを拝見して複雑な気分になりました。もし彼が感染していれば病院に行くことで感染を広げかねないし、逆に感染していなくても彼自身の感染リスクを高めてしまいかねません。病院へは公共交通機関でいくのか、急患を診る診療所はちゃんと感染対策できているのか等いろいろと心配になってきます。

PCR検査をどこまで広げるべきか様々な意見がありますが、現にコロナの感染拡大が続いている中で十分な感染対策が行われず、水際で検査数を抑える対応が続き、これまで通り発熱は細かく診断せず「風邪でしょう」と返す、隔離もしない対応を続けていて大丈夫なのでしょうか?このままでは院内感染なり公共交通機関での感染を広げかねないのではないでしょうか。発熱している患者の中には何%かは検査陽性者がいてもおかしくないのに。

自分も週の何割かは出勤を余儀なくされ、徐々に電車も混んできたものだから、いつ感染するか全く他人事ではない訳です。仮に友人のように熱が出たとき、自宅療養しようにも家族に感染させてしまうかも知れない、コールセンターには電話が繋がらない、病院に行っても風邪でしょうと帰されてしまう、そういった時に、どうしたらいいのでしょうか?まずは何日か自宅療養するにしても、家族との距離をどう取るのか、仕事を休もうにも確定診断が欲しくなるところです。

例えば救急車を呼ぶ程でもない発熱の場合、普通の風邪と同じように公共交通機関を使っても構わないのか、タクシーに乗っていいのか、熱が出ていても酒を飲んでなければ自家用車を運転して構わないのか、家族に運転させるべきか。そもそも自家用車や運転できる家族がいなかったらどうすべきか。こういったジレンマを解消するために、コロナの感染を抑えるための医療体制や、感染が疑われる者を隔離するための仕組みを確保するための取り組みは進んでいるのでしょうか。

医者や看護婦、病院の苦境も聞こえてくるところですし、本来であれば議論や新たな立法が必要であろうこの時期にマスクがどうとか、Go To トラベルや自粛要請の是非とか、金勘定と足の引っ張り合いみたいな議論ばかり聞こえてきて心配になってしまいます。この非常事態にあって足元の執行がどれだけ効率的だったかよりも前に、これからの感染拡大に対してどのように対処するかを論じるべきではないでしょうか。そのために予備費を積んだはずが、感染拡大に対する備えの検討は進んでいるのでしょうか。

あたかも人命か経済かのトレードオフであるかのように論じられていることも本来おかしなことです。感染を小規模で抑え込むことができなければ後からより経済への影響が大きな規制を敷く必要が生じます。100年前のスペイン風邪からの教訓も、早い段階で強く介入して感染を抑えた都市ほど、結果として経済回復が早かったことが最近の研究で明らかにされています。

感染が拡大している限り、旅行や外食といった業界で、本格的な消費回復は難しいでしょう。地方も含めた多くの地域で感染が拡大すれば、結果としてより多くの地域で厳しいこととなります。結局のところ消費を抑えているのは政府や自治体による自粛要請だけでなく、感染を恐れる市井の人々の行動です。感染を恐れる気持ちは時として暴走し、陽性患者に対する激しい差別や投石などの暴力的な行動に結びついています。多くの人々がこうした「私刑」を恐れて、政府や自治体からの要請を先回りして自粛しています。

仮に自治体からの要請が過剰で、感染拡大には繋がらない経済活動に対してまで不当な抑制を行っているのであれば、それは合理的な内容に見直すべきです。しかしながら新型コロナによる影響の大部分は政府からの要請による影響だけでなく、感染や周囲からの「私刑」をを望まない人々自身の行動変容によって起こっている面も無視できないのではないでしょうか。一方で先が見えない自粛に疲れ始めてもいて、仮にGo Toトラベルキャンペーンがなかったとしても夏休みに旅行を計画していた人々は多いでしょうし、ここ1〜2週間の感染拡大を受けて、泣く泣く夏休みの計画を見直した方も少なくないのではないでしょうか。

どのみち新型コロナが収束しない限りは元の生活を取り戻す見通しは立たず、誰もが感染拡大に怯えながらリスクを抑えた生活様式を模索している訳です。これからもう1年か2年近くは、このような状況が続くかも知れない。その前提でどうやって感染を抑えつつ経済を回し、立ち行かなくなったセクターの人々を他のセクターで受け入れていく、そういったことまで考える必要が生じています。じゃぶじゃぶと補償を続けたからといって、これまで通りに産業を維持できる状況ではなくなりつつあります。

例えばバブル崩壊やリーマンショックを受けた近年の経済対策は、経済の問題を経済で何とかしようというものでしたが、今回の新型コロナは経済に閉じた問題ではありません。実体経済や消費者心理、国際経済に大きな影響を与えている新型コロナ自体を何とかしないことには、いくら金融緩和や財政のカンフルを打とうにも需要は喚起されないでしょう。人命か経済かの二律背反ではなく、まずは人命と人々の不安をどうにかしないことには、経済は回復しないのです。経済を回復させるためにも、まずは感染をどのように抑え込むか、その間に麻痺してしまう産業セクターをどう支援するか、それぞれの分野の専門家が互いにその専門性を尊重し合って、まだ感染規模が手に負えるうちに、まずは感染を抑え込むことが肝要ではないでしょうか。

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マイクロソフト、ヤフーなどを経てJapan Digital Design CTO。内閣官房 政府CIO補佐官、東京都 デジタルサービスフェロー、ISO/TC307 国内委員会 委員長などを務める。