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起業失敗の最大の原因

起業といっても、狙いや規模感は様々です。投資家から資本を調達して高成長を目指すものから、自己資金や借入のみで個人商店を営むようなものまで幅があります。今回は、投資家から資本調達を行う起業に関して論じます。

米国では投資家にプラスのリターンを返せる起業は3分の1以下だと言われています。起業は、失敗の確率の方が圧倒的に大きいのです。結果的に、我々は起業は危ないものだという感覚が刷り込まれています。

それでも、挑戦することへのリスクを減らし、未来志向で新産業を立ち上げていく挑戦者を増やすために、日本では2022年7月から会社勤めだった人が起業する場合に、失業手当を受け取れる期間を最大4年にする特例を始めます。

起業家の立場で考えると、お金の手当があることで多少の心の平安は得られるにせよ、そもそも失敗なんかしたくないので、失業手当は根本的なリスクの回避にはなりません。

なぜ失敗するのかのメカニズムを理解し、先んじて対応していくことが、本質的な対応策になるはずです。

一般的に、失敗の理由としては、起業家のやり抜く力、業界への洞察力やリーダーシップなどが指揮される傾向にありますが、これは創業者の能力のみに原因を求める、単純化しすぎた解です。

ハーバード・ビジネス・スクールで起業家論の教鞭をとるアイゼンマン教授は、数百人の創業者や投資家をインタビュー調査し、おびただしい数のスタートアップ企業が無に帰するのはなぜなのかを説明する「6つのパターン」を特定しました。

① 誤ったスタート
② アイデアはよいが、協力者に問題がある
③ 誤った認識
④ スピードの罠
⑤ 支援の欠如
⑥ 奇跡の連続

ハーバード・ビジネスレビュー2022年1月号
スタートアップはなぜ同じ失敗を繰り返すのか

失敗原因の詳細に興味がある方には、ぜひこの論考を読んで頂きたいのですが、ここでは頻繁に発生し、かつ回避可能な起業の失敗原因である「① 誤ったスタート」を取り上げます。

近年、GoogleやFacebookなどの大規模に成功したデジタルサービスが立ち上がってきた中で、再現性の高いサービス成長への方法論の確立が模索されてきました。例えばプロダクトマネージメントで言えば「リーン」であり、ソフトウェア開発で言えば「アジャイル」です。

どちらも、アイデアを最少費用で即座に形にし、使用者にぶつけ、反応をみながら改善を繰り返すことで、失敗の費用を下げ、迅速な軌道修正を目指します。

この方法論を適用すれば、長期に多大な費用をかけて開発したアイデアが、結局なんの価値もなかったという悲劇は生まれにくくなります。アイデアの間違いに、早期に気づくことができるわけです。

では、このやり方を適応すれば、すべて上手く行くかというと、実はそんなことはありません。

まず、我々が素晴らしいと思ったアイデアであっても、現実世界では誰も望んでいない可能性があります。解のない場所で、軌道修正をしながら改善を進めても、永遠に成功を手にすることは出来ません。油田のない砂漠を掘り続けるような状態になります。

さらに悪いことに、人間の特性として、一度何かを作って改善サイクルが回り始めると、執着して、その場から大きく離れることは難しくなります。

検証に着手するスタート地点となるアイデアを間違えると、取り返しがつかなくなることを意味しています。

この過ちを回避する方法は意外と単純で、「顧客発見」というプロセスを前段に挟めば良いのです。本来「リーン」において実施を提唱されているのですが、軽視されてしまっています。

ものをつくって検証したいというはやる気持ちを抑えて、サービス利用者はそのアイデアを利用するに足る問題を抱えているのか、インタビューによって明らかにするものです。何かを作り始める前に、最低でも20人にはインタビューを実施することが求められます。

アイデアを思いつくことは素晴らしいことですが、それを欲する人が本当にいるのか調査せずに前進をすることは、破滅への道につながります。

顧客発見プロセスを省略することが、起業が盛んな米国でも頻発し、失敗の主な原因になってしまっているのです。驕らず、自分にも起こらないはずがないと心して、起業に取り組みましょう。

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