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雇用慣行だけでなく、業務慣行の見直しで生産性向上を

早朝通勤列車増発について書いたところ、複数の方からご指摘を頂いた。

日本企業が、定時出社にこだわり、フレックスタイムの導入が一部にとどまることが、通勤ラッシュがいつまでも緩和されず、そのあげく早朝時間帯の通勤列車を増発して残業を増やしてしまいかねない動きにつながっているのだが、その理由が、多すぎる(社内)会議にある、という指摘だ。

会議時間を設定しようとすると、いわゆる「あさいち」が一番設定しやすい。外出や社外とのミーティング等に影響されにくいからだ。そうなると、フレックスタイムでは都合が悪いので、出社時間は一定の「定時」に、ということになる。

そして、その会議も、多くは意思決定のためではなく、情報共有のためのものだということ。一定以上の規模の会社であればイントラなどを活用すれば、情報共有だけのために会議を開催する必要はないはずなのだが、それ(=イントラ)はそれとしてオフラインの情報共有ミーティングが存在し続けている会社は多いのではないだろうか。

さらに、意思決定については、オフライン会議で議論して決めていく必要があるのは肯定するとしても、(中間管理職に)権限がない、ないしは曖昧なために、下から上へと複数の会議を経ていかないと決まらない、決められない、ということ。

これは、自分の会社員時代を振り返っても、思い当たる。

かくして、社内各部署の各階層で、情報共有と意思決定のミーティングを繰り返し、その合間に本来の「生産的な業務」をやっているのだとすると、生産性が上がるわけもない。

発表された経済財政白書では、生産性の向上には働き手の多様化が必要だ、と指摘されているという。

確かに、人材の多様化は生産性を刺激すると思う。ただこれは、雇用慣行の見直しをしたら、いきなり働き手が多様な人たちに変わるわけではないから、時間がかかる話だ。

即効性を求めるのであれば、むしろ、会議の設定の仕方や条件など、いわば「業務慣行」をみなおして、たとえば、会議へのオンライン参加をデフォルトとしてオフライン参加の強制を制限したり、会議時間を制限したり、あるいは会議の長さと出席者の役職に応じて社内課金したり、といった方法で、会議の回数と時間を減らすのはどうだろう。これとセットでフレックスタイムの導入やテレワークも推進し、働いた時間ではなく生み出した価値・成果をもとに給与が増減するなら、評価もフェアで働きやすい職場になり、定着率も改善するのではないだろうか。

また、権限委譲ができないなら第一報を受けてから最終的な意思決定までのタイムリミットを設けるなどして、特に海外企業やスタートアップと連携した業務が生まれない・実らないことの大きな原因となっている、意思決定の遅さを改善することも、生産性向上に大きく寄与するだろう。

こうしたことも、「慣行」であるだけにどこからどのように手を付けたらいいか難しい課題だとは思うが、お役所が音頭をとったりモデルを例示したりするとともに、うまく行った会社があればその成功事例を伝えるなどしたいところだ。

なにより、生産性の向上が企業の業績アップにつながり、株式市場からの評価が上昇し株価が上がっていくのだとしたら、経営陣も無視できないことになる。

具体的な方策は手探りをするしかないかもしれないが、雇用慣行と並んで業務慣行の見直しがあることで、生産性向上が揺るぎないものとなっていくのではないだろうか。

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