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結婚でも、復職でも、出戻りのキーワードはカルチャーフィット

一度離婚した夫婦が、元の鞘に収まる、という話は寡聞にして知りません。これはつまり「出戻り」という現象はそうそう起きない、ということを意味しているわけですが、元はといえば好きあったもの同志なのに、別れたらそれっきりになりがちなのは、なぜでしょうか?

離婚の原因、と検索すると男女双方の視点で「性格の不一致」がトップに挙げられています。知り合った翌日に結婚するわけでもないだろうに、ことさら性格の不一致が結婚後に浮き彫りになる理由として、

・生活の中での作法やプライオリティ、コミュニケーションの取り方などの違いが表面化し、夫婦の一体感が薄れる

という点があるのではないか、と筆者は考えます。

これは些細に見えて、意外に大きなインパクトがあるのではないかと思います。感情表現、食事の食べ方、お風呂の入り方、お金の使い方などについて、人は両親の環境の影響を強く受けます。そして子供の頃から成人するにかけて、ほとんどの人は一つの家庭で育ちますので、その家庭のやり方が絶対則になりますが、これは一度外に出ると家庭の数だけあるバリエーションの一つにすぎません。

つまり結婚して一つ屋根の下で暮らすということは、絶対則と絶対則がぶつかる、という際どい環境に自ら飛び込んでいくような話であり、ここに慣れによる思いやりの低下、厚かましさの増加が重なり合うと、日々目にする相手の細かい言動がいちいち癇に障るようになり、それが性格の不一致として表出する、という構造なのではないか、という次第。

夫婦互いが、思いやりや厚かましさを自制し、相手の差異を個性と認め、自分達流の作法やプライオリティを確立したり、コミュニケーションの流儀をどちらかが相手に合わせたりすることができれば、性格の不一致のリスクは相当程度下げられのではないかと思います。

これらが合っているカップルであれば(そもそもそういう2人はそうそう離婚したりしないでしょうが)、例え何らかの理由で一度別れても、復縁、すなわち出戻りの可能性を残すのではないか、と筆者には感じられます。

さて、今回のコメモのお題はこれです。

上で記した「家庭間での作法、プライオリティやコミュニケーションスタイルの齟齬」は、企業間でもあります。企業においてはこういう作法・コミュニケーションなどの要素を総合して「カルチャー」と呼んだりします。

筆者は今まで6つの企業で、チームマネジメントを経験してきました。その中で延べ20人以上の外部採用を行いました。

採用した人数がこれなので、面接でお目にかかった人数ということだと、その10倍くらいには上ります。結構な時間を外部採用に使ってきたことになります。

採用した人が期待通りの活躍をしてくれず、あれれ、ということもありましたし、そこそこの期待値で採った人が大活躍してくれる、「嬉しい誤算」もままあります。

このようなことがなぜ起きるのか、と考えてみると、以下のような「面接」という手法の特徴があるのではないか、と思います。

(1)「頭の良さ」や「積み重ねてきた経験」は比較的よく見える

(2)カルチャーフィットは見るのが難しい

採用した人が期待に届かない場合は、(2)に難がある場合が多く、逆のケースでは(2)がドンピシャで合っている、という次第。

出戻り社員に期待すること、は、ずばりこのカルチャーフィットが確認できていること、に尽きると思います。

以前、友人のヘッドハンターから、ある業界の有名な二大企業の対照的なカルチャー、という例としてA社は謙虚さ、傾聴、サーバントリーダーシップなどが要求されるのに対して、B社では「この成果を出したのは自分だ」と主張することが求められる、という話をきき、ずいぶん違うものだと驚いたことがあります。A社で活躍していたCさんが、そのカルチャー・規範をそのまま持ち込む形でB社に転職したとしたら、活躍どころの騒ぎではないわけです。

自分のイメージ通りに活躍できない、という状態では、A社ではスポットライトを浴びていたCさんも、B社では異分子的な存在になってしまい、下手をすると孤立してしまいます。彼または彼女がそれを克服し、自分の中でカルチャーフィットを実現させられればいいのですが、往々にして人は他責的に考え、に問題の所在を求めたくなります。こうなるとCさんはだんだん「腐ったリンゴ」への道を歩むことになります。

出戻り社員であれば、こうした心配は要りません。

その一点をとっても、社員の出戻りは、検討する価値が高いものである、と考えます。

最後に。ダイバーシティ&インクルージョンの視点で上記A社・B社・Cさんのことを考えた時、B社は多様性を担保するためにCさん(が持っているようなA社)のカルチャーも受け入れるべきだ、とする考え方をお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、筆者はダイバーシティ&インクルージョンは、インクルージョンの方に重きが置かれるべきであり、言ってみれば多様な視座や経験やスキル(これがダイバーシティ要素)を、一つのカルチャーで包摂していくこと(これがインクルージョン要素)なのではないか、と考えます。

カルチャーは、ミッションやヴィジョンとともに運営されることとにより、社員のベクトルを揃え、組織内での力の分散や減衰を防ぐ作用があります。

多様な視座やスキルが、行動規範により導きびかれる一定の方向を向くことが、パワーになるのだ、と思うのです。

この考えから、出戻りを採用の主軸にして純血主義に向かっていくことは、多様な視座やスキルの供給が限定的になりそうなことから、リスクを伴うと思います。あくまで、色々な採用の方法の一つとして、カルチャーフィットを担保できる技術としての出戻りを、組織は手持ちのカードとして活用すべきだ、ということですね。

読者の皆さんは、どうお考えになられますか?




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9つの事業会社でマーケティングやってきました。うち、西友、ドミノ・ピザなど4社でCMO。現在は株式会社Preferred Networksの執行役員CMO、イトーヨーカ堂・セルム顧問、日経XTrendアドバイザリーボード、厚生労働省年金局広報検討委員、内閣政府広報アドバイザー等。