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釧路の未来: 毎月1回釧路に行って分かったこと

8月、9月、10月、11月と、4回にわたって釧路に仕事で来ることになった。釧路の未来を描くための仕事だが、釧路に定期的に出張するという幸せを皆さんにお伝えしたい。

釧路の魅力(1):食べ物が美味しすぎる

まず、だれもが知っているであろう魅力から。私が「定期的に釧路に来る幸せ」と当たり前のように書いたのは、この街の食べ物は、とにかく美味しいから。夕飯をどの店に食べに行こうか、刺身にしようか、焼き物にしようか、あるいはつぶ貝、ラーメンにしようか。あああーー、どれもほんとうに美味しい。良い店に当たれば、こんなに美味しい刺身は食べたことがない、というタコやマグロに出会うことができる。

さらに、お土産でクール宅急便で送る魚介の美味しさも半端ない。毎月行くから、定期的に親兄弟にとれたての魚介を瞬間冷凍したものを送ってみた。それまで疎遠にしていた親戚関係も、「美味しいものを送ってくれる素晴らしい男」というブランドに一発で塗り替わるほどだ。とくに、釧路のホタテは最強で、人間関係を再構築するパワーを持っている。

そして某ホテルチェーンの朝食が秀逸なのだが、いくらやホタテが山盛りになっていて、寿司飯の上に載せ放題。これは熱い。ほんとうに朝から食べ過ぎてしまい、ほぼ昼食は抜きになる。それほど美味い。

釧路の魅力(2):気候が素晴らしい

釧路の魅力は食べ物だけではない。一年を通して平均的に涼しく、夏に冷房が必要になることはない。そのため、夏場に1ヶ月ワーケーション、といった人々が日本中から押し寄せている。朝は霧になることが多く、夕方は美しい夕焼けで有名だ。東京や大阪でエアコンに守られた人生を送っている人々にとっては、釧路の「自然とともに生きることを可能にする気候」は、ほんとうに魅力的なはずだ。

11月の訪問日の最低気温は-2℃であったが、昼は10℃近くに上がり、日差しのあるところでは、あったかいくらいであった。

釧路の魅力(3):イノベーションの余白がたくさん

そんな釧路に、なんで私が何度も足を運んでいるかと言うと、釧路が「持続可能な都市の最先端地域になる」という可能性を感じている北海道大学とのコラボレーションをしているからだ。

次の記事では、先端技術で釧路の地域課題解決をしようという若者たちの取り組みが紹介されている。
「9つのテーマで開いたカンファレンスでは、道東地域の基幹産業である水産業や酪農、観光と先端技術をつなぐ場として、地域の事業者や研究者らが取り組みを発表し意見交換した。家畜ふん尿を使ったLPガス生産に取り組む古河電気工業や北海道大学の研究者、会場となった中標津町の酪農事業者が登壇した。」とあるが、この登壇した「北大の研究者」は、私のコラボレーションパートナーだ。

家畜のふん尿という「困りものが資源となって循環する」ことが、サステナビリティ関連研究の面白いところだ。これまで資源が豊かで、いわば「取り放題」の産業で栄えた釧路であるが、石炭、製紙、漁業の三大産業が陰りを見せたことで、本気になって循環社会に舵を切ろうとしている。

しかし、一つひとつの技術を完成させることは容易ではなく、簡単に「あらゆるごみを資源に」という夢が実現するわけではない。次は「家畜ふん尿由来のバイオガスから二酸化炭素(CO2)を分離する技術」の記事だが、「循環させることの難しさ」に加え、「循環させることが脱炭素につながる」かどうかも一筋縄ではいかない。

養殖や牧畜などでの飼料価格の問題も、このところの円安で深刻化している。コーンなどの飼料の輸入価格が倍増しているため、養豚業者などは利益が出ない状況に追い込まれている。そこで注目されるのが循環型の飼料であるが、これも取り合いであることが次の記事に記されている。

持続可能性に本気で取り組む都市が求められている

持続可能性に向けた循環社会づくりは、概念としては普及したが、実践レベルでの普及は、残念ながらまだまだの状況だ。なぜなら、持続可能性は「資本主義社会の原則」である「もうかるならやる」という考えでは、まったく進まないからだ。

だからこそ、今必要とされているのは、「大事なことはみんなやる」という自治体の登場だ。もちろん、そんな予算はどこにもない。だからこそ、「大事なことはやる」という政策と、「それをやりに我が都市にみなさん来てください」という地域創生を組み合わせることが必要である。

ここまで魅力を伝えてきた釧路であるが、この数十年で人口が急激に減少し、人が増えることを前提とした「大きな釧路」を描いた都市計画の失敗により、中心部の駅前は廃墟と化している。ほとんどの建物は古いままでリノベートされておらず、「過去の街」というのがハードから受ける印象だ。

だが、まちづくりに取り組む人たちは創造的で、この都市の不良債権となったハードを「廃墟ツアー」や「つながる場づくり」に活用し、未来をつくろうとしている。

日本には、自然、食、気候、人財など、ほんとうに素晴らしい資源を持っている地域がたくさんある。しかし、高度成長期のビジネスモデルを追いかけているだけでは、その素晴らしい資源が未来のために活かされていないのが現状である。

サステナビリティをグランドルールにしたときに、資源を使い捨て続けるのではなく、循環させることで、その都市にしかないホンモノの魅力を生み出すことができる。各都市が次々とサステナビリティ宣言で名乗りを上げ、創造的人財がそれらの都市に集まり、新しい経済モデルと豊かな暮らしが生まれる。そんな日が来るのは、思ったよりもすぐなのかもしれない。

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