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なじめないと感じている友人への言葉に励まされた話

こんにちは。Funleash志水です。前回のNoteもたくさんのコメントやスキをいただきありがとうございます。時々暑い日はあるものの、朝の空気や虫の声に秋の訪れを感じるようになりました。

さて、皆さんは今年の夏を満喫されましたか?
鎌倉(正確には稲村ケ崎)に越して初の夏は、東京から多くの訪問者を迎え海で時間を過ごす機会がいっきに増えました。海のそばに住むとこんなメリットがあり嬉しく思います。
3年ぶりにオープンした夏の風物詩、海の家にふらっと出かけて夕陽を見ながら、多国籍料理を楽しむ。例年とは違う夏でした。

ある週末の夜、海辺のイタリアンで友人たちと近況報告をしている時のこと。数か月前に転職したばかりのAさん。いつも元気いっぱいなのにどことなく言葉数が少ないのに気づきました。新しい職場どう?楽しくやっているの?と聞いてみると、こんな言葉が返ってきました。

「実は入社した会社になかなかなじめなくて。社員は良い人ばかりだし、仕事もやりがいがあるんですが、どうもしっくりこなくて自分が浮いている気がするんです」

普段ならば何かしら助言をしたり、励ましの言葉が見つかるのですが、その時は珍しく言葉がでてきませんでした。瞬間、自分の人生を振り返っていたのです。

学校であれ、クラブであれ、組織であれ、なじむのに相当な時間がかかってしまう。場になじめなくて逃げ出してしまうことさえあった自分の姿が思い浮かび、なぜ私はなじめないのか。もしかしたら自分に欠陥があるのではないか。悩み苦しんできた自分の姿と重なりうまく言葉がでてきません。

とっさに別の友人が声をかけました。

「なじむ必要なんかないんだよ。あなたはあなたのままでいい。最低限の社内ルールは守ったほうがいいけど、個性を消し去ってまでなじむ必要はない、むしろ既存の文化を壊してほしいという期待もあるかもしれないよ。」

あなたはあなたのままでいい・・この言葉は前職の価値観であり、いろんな人事施策や制度を考える時に軸になった大好きな言葉です。
この思想があったからこそ長年、競争の激しい外資でも自由にやってこれました。

久しぶりに聴いた言葉が友人にも響いているのがわかりました。

新しい場に加わった時、なじめないという感覚を覚えることはないでしょうか。
周囲が思っている以上に本人は悩み苦しみ、孤独感を感じてしまう。

その友人や私がそうであったように自分の価値観や軸が明確なヒトこそもしかしたら「なじめない」感覚に陥ってしまい、時には自分を責めてしまうことさえあります。

個人がある組織の一員になるために、その組織で必要な知識・規範・価値を修得するという形で変化し、組織に適応していく過程を「組織社会化」(organization socialization) と言います。

乗り物に乗っていることを意味する”On Board”という言葉から、人事用語では「オンボーディング」ということもあります。ひらたくいうと、新しい仲間が環境に順応できるような取り組みのことです。

なるべく早く望ましい結果を期待する組織は、新規参入者の変容を促そうとします。
そのため組織がプロセスを主導することが多く、参画したメンバーはオンボーディングを通して、組織の中での役割、仕事の進め方、人間関係、組織風土、組織の価値観などを学習します。

組織社会化に関する研究は数多くあり、学習の内容、スピード、期待される効果との相関を示す結果も明らかになっています。人事をやっている人は身につけたい概念です。

一方、個人(新規参入者)の観点からはどうでしょうか?オンボーディング中に、個人は組織における自分をどのように適応させるのでしょうか。

私たち人間には、ゲノム的に自分自身を定義したり、自分の存在意義を確認したいという動機が備わっているといわれています。

新しい組織に(会社のみならずあらゆる場において)参加したとき、それまで自分が持っていた信念や行動の意味づけが通用しなくなる。誰もがそんな経験をします。自分は何者であり、何をしたいのか、どうありたいのか。私は本当にこの組織にふさわしい人間なのだろうか。
自分への問いが浮かび、時には自分の存在価値が大きく揺さぶられます。

学術的な観点から、個人は組織社会化を通して「自分のアイデンティティが再構築し、徐々に組織に適応していくといわれています。
このときに、感情面など個人の内面的な変化に対しても十分な配慮が必要になります。
なぜなら、業務や仕事の進め方ばかりに気を取られて、個人の内面で起こっていることに目を向けることがおろそかになることがあるからです。
時には個人の中で疎外感、もしくは深い孤独感が生まれていることもあります。

組織や社会になじめない・・孤独感、疎外感は人の心や身体を蝕みます。

孤独感が進むと、「居場所がない」「存在価値ない」と感じるようになります。他人に頼れない苦しさから、自分や他人を傷つけてしまうこともある。多くの犯罪、悪質なクレームを調べていくと、社会や組織からの孤立に原因があることがわかっています。

私自身も経験があります。
孤独感やつながりの欠如から、自分には価値がないと落ち込んでしまう。周囲に対して防御的になったり、時には思いもよらない言動をとってしまうことがありました。心を開いて助けを求めることができたらよかったのに・・
冷静に考えるとそうなのですが、当時は判断ができないほど深い孤独感を感じていました。

今の時代は自立や自律が善とされています。ゆえに他人に頼れず苦しんでいる人が多い。
前述したオンボーディングのように組織や集団側で準備できることもあります。他方、個人としてどんなことに気を付けたら防げるのだろう。 
そんなことを考えていた時に素晴らしい記事に出会いました。

東大准教授・熊谷晋一郎氏は、記事の中で
「自立とは依存先を増やすこと」だと主張されています。

「自立とは依存先を増やすこと」。自らの経験を基にそう発信してきた。

一般的に「自立」の反対語は「依存」だと思われています。でも人間は物であったり人であったり、さまざまなものに依存しないと生きていけません。依存先は多ければ多いほど、一つ一つへの依存度が浅くなります。

特定の依存先とうまくいかなくても、代替がきけば安心できます。

人に迷惑をかけてはいけない、人に頼ってはいけない・・そう信じて生きてきた私にとってこの言葉は目から鱗でした

いろんな人や複数の場所を見つけて
ちょっとだけ依存する

自分が所属しているコミュニティを増やして、依存できる場所を分散する。

子育てや介護、病気、いじめ、不登校・・さまざまな状況に置かれている私たち。 
大人も子供も、誰もが気軽に「依存」できて、「つながり」を見つけられる場所を増やしていくことが必要なのでしょう。

もし今いる場所になじめないと感じている方がいらっしゃったら、

孤独感を感じているのはあなただけではないんだよ。

誰かに どこかに 依存していいんだよ。

そんな言葉をかけたいなと思いました。

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