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生涯現役が現実に 意欲ある「スーパーミドル」を社会で活かせ

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

人生100年時代、生涯現役という掛け声をそこかしこで聞くようになりました。労働人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたもの)の急減少が予測されている中で、65歳定年以降の方の減少をどう補うのかは国全体の課題です。

以前は農業従事者が多かったため、定年という感じはなく元気なうちはできる範囲で手伝うなどの労働参加がなされていました。その後、高度経済成長期に製造業を中心に大きな労働力が必要となり、勤め人として働く人が大幅に増えました。すると会社の制度上、60歳(現在は65歳)に定年を迎えて退職金と年金をもらいリタイアするという流れになりました。

現在は終身雇用制度自体が壊れつつあり、以前のようなモデルは現実的でなくなってきています。退職金や年金の減額または物価上昇により、それだけでは日々の生活を維持するのには心もとないという事実があります。2019年には「老後資金2000万円問題」として報道で広く知られることになり、国会でも問題となったことは記憶に新しいです。

・高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる。
・収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取崩しが必要になる。

金融審議会市場ワーキング・グループ「高齢社会における資産形成・管理」報告書/金融庁2019

若干誤解をされているように思いますが、定年時に2000万円の貯金が必要と言っているわけではありません。毎月平均5万円の赤字が出る、それを30年続けるとすると合計2000万円必要になるという計算です。つまり、65歳で定年して95歳まで生きるとしてその間に収入がない場合の話です。

一方で現在の平均寿命を鑑みても、65歳以上で働く意欲があり、実際に健康上も全く問題のない方々はたくさんいらっしゃいます。現に、首相の岸田文雄さんはちょうど65歳。また、内閣の閣僚平均年齢は、岸田氏を含め61.8歳(発足時)であり、また最年長は農林水産大臣・金子原二郎氏の77歳。大きなストレスのかかる国の最高意思決定機関であってもこの状況なのですから、働き方など適切な配慮を講じればより多くの方が活躍できる土壌があるはずです。

実際に人材不足の深刻な地域では、官民が協働して推進協議会などを立ち上げてシニア活躍を後押ししています。

総務省が5年に1度実施する「就業構造基本調査」から、働いている65歳以上の人の割合を算出した。高齢者の増加や農業従事者の減少もあって、1968年の33.6%をピークに低下が続いていたが2012年に反転。7月発表の22年調査では、全国平均が25.3%と前回の17年より0.9ポイント上がり、12年比では4.0ポイントの上昇となった。

12年に比べた22年の伸びを都道府県別にみると、沖縄県がトップで鹿児島県が2位だった。5位に福岡県、7〜9位に宮崎、長崎、熊本の3県が続き、トップ10の半数超を九州・沖縄が占めた。人手不足が深刻な地域とほぼ重なる。

九州・沖縄の8県と山口県は15年、経済界などとともに「九州・山口生涯現役社会推進協議会」を立ち上げた。高齢者の就業に積極的な企業の事例集作成や表彰制度などを通じてシニア活躍を後押しする。鹿児島県の働く高齢者の割合は12年の全国37位から5位に浮上し、沖縄県も最下位を脱した。

日経電子版

現在、日本の総人口に占める65歳以上の割合は約30%です。シニアというとかなりのおじいさん・おばあさんに聞こえますが、これからは40-50代のいわゆるミドル層の延長と捉えて「スーパーミドル」などと呼ぶ方が適切かもしれません。

コロナ禍を経て定着しつつあるリモートワークなどのデジタル技術も、より幅広い層の労働参加を促す効果があると思います。また、社会とのつながりを保つことは心身の健康にも役立ちます。核家族化や独居の増加による孤立感の解消にも役立つことでしょう。

今後は経営者にとってみても、人材確保は常に頭を悩ませる課題です。働き方改革の総仕上げとして、誰もが適切な場所で輝ける環境を整備することが、この課題を解消する最短かつ最善の策であると考えています。


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タイトル画像提供:interstid / PIXTA(ピクスタ)

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