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賃貸から持ち家に移行可能なマイホーム所有形態の開発

マイホームの価値観として「賃貸と持ち家はどちら得か」という議論は、決着が付かないまま続いている。賃貸or持ち家の判断は、住みたい地域の不動産相場、収入や生活スタイルによっても変わってくるが、その家に長期で住み続けたい場合には、購入したほうが得であるケースが多い。賃貸の欠点は、家賃を何十年払い続けたとしても、その家は自分のものにならないことである。

理想的なのは、賃貸で住み始めた家が気に入れば、そのまま購入できる選択肢があることだが、これを新たな住宅事業として実現させることが、米国では旬のビジネステーマとなっている。

背景にあるのは、米国の大都市周辺で住宅の賃貸相場が急騰しており、「高い家賃を払い続けること」に疑問を感じる人達も増えていることにある。シリコンバレーの住宅相場を例にすると、単身者向け1ベットルームの物件で2,500~3,000ドル(約27~33万円)、ファミリー向け3ベッドルームの物件は4,000~5,000ドル(約44~55万円)が相場である。

シリコンバレーのIT企業に勤める人材は、20代の若手社員でも年収は2000万近くあるため、家賃を払えないわけではないが、良い物件さえ見付かれば、購入を検討した方が賢いという考え方もある。米国の住宅相場は年々上昇しているため、住み続けることで住宅の資産価値も上昇していくためだ。ただし、高年収者でも住宅ローンを組むための頭金をすぐに作ることは難しい

そこで、2018年に米シリコンバレーで創業した「ZeroDown」というスタートアップ企業は、若手のエリート人材を対象に、優良物件を最初は賃貸で利用しながら、その家が気に入れば2~5年以内に「購入」できる権利を与える、住宅販売の仕組みを考案している。

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ZeroDownは投資ファンドから調達した資金で、顧客が希望する住宅を購入して、最初の2~5年は賃貸物件として提供する。その間は月額の住宅利用料を請求するが、その一部は購入クレジットとしてプールされ、購入を決断した時に、住宅ローンの頭金として使えるようにしている。購入を検討できるのは、入居してから2~5年間だが、実際に住んでみた後に「購入しない」選択をすることも可能だ。その時には、物件から引っ越し(退去)をすることになるが、プールされた購入クレジット分の資金は返却される。

ZeroDownのビジネスは、賃貸大家になることではなく、あくまで「住宅を販売すること」を目的として、住宅購入に必要な住宅ローンの頭金がプールされるまでの期間(2~5年)を、賃貸物件としても住めるようにしたスキームを構築している。利用者にとって、賃貸期間は通常の家賃よりも若干割高な“住宅利用料”を払うことになるが、一度の決断で人生最大の買い物をするよりも、数年間は賃貸で住んでみて、その家が気に入れば購入、気に入らなければ転居の選択ができるのはメリットがある。

住宅相場が年々上昇している米国だからこそ、実現できるビジネスモデルではあるが、賃貸から持ち家に移行できるマイホームの所有形態は、日本でも潜在的なニーズは高く、住宅業界にとっては新たな販売形態として研究してみる価値はある。

※ZeroDownのビジネスモデルは、JNEWS会員向けレポート2019.9.12号で詳しく解説しています。

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