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欧州で普及し始めるプラスチックフリー店舗の正体

日本では、2020年7月からコンビニ業界、ドラッグストア業界、百貨店業界などが相次いでレジ袋を有料化する。その背景には、環境省が資源・廃棄の削減、海洋ごみ対策、地球温暖化対策等などを含めた「プラスチック資源循環戦略」の具体策として、レジ袋の無料配布を禁止することで、消費者のライフスタイル変革を促そうとする政策がある。

セブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武は8日、買い物袋を7月1日から有料にすると発表した。プラスチック製は環境負荷の低いバイオマスプラスチック配合の素材に変更し、紙製も無料配布をやめる。全国の小売店では、7月からプラ製レジ袋が有料化される。同社は紙製も有料にすることで、消費者にマイバッグの持参を促す。(日経新聞 2020/6/8 )

プラスチックゴミの中で、レジ袋の占める割合は小さいものの、エコバッグを持参して買い物をするスタイルの定着は、国民全体の環境意識を高める効果がある。プラスチックゴミによる環境汚染は世界に共通した問題であり、規制が強化されている。

世界で最もプラスチック容器に対する規制強化が進んでいるのは欧州で、EU理事会は2019年5月に「使い捨てプラスチック容器の流通を2021年までに禁止する法案」を採択している。これにより、EU加盟国の小売店や飲食店は、使い捨て用途のプラスチック、発泡スチロール容器の大半が使えなくなる。

《EUで流通が禁止される使い捨て容器》
○プラスチック製のフォーク、ナイフ、スプーン、箸
○プラスチック製の皿
○プラスチック製ストロー
○発泡スチロール製の食品容器
○発泡ポリスチレン製飲料容器
○発泡ポリスチレン製の飲料用カップ
○オキソ分解性のプラスチック製品

EU理事会、使い捨てプラスチック製品禁止法案を採択(JETRO)

こうした規制を受けて、使い捨て容器を一切使わないスーパーマーケットの業態転換が進められている。英国のスーパーマーケットチェーン、ウェイトローズ社では、「Waitrose Unpacked」という完全なプラスチックフリーを目指した新業態の店舗を2019年6月から実験的に期間限定でオープンさせた。同社は、消費者の反応を見ながら、既存の店舗を、今後のプラスチックフリー社会に適応した、新店舗へ改装していくスケジュールを見定めていく方針だ。

Waitrose Unpackedの店舗では、野菜や果物などの生鮮品が未包装のまま陳列されていて、来店客は好きな数量だけ買い物カゴにピックアップしていく。コーヒー豆・ナッツ・コメなどの乾燥食品はガラス製のディスペンサーに収納されており、希望の分量だけグラム単位で購入して紙製の袋に小分けする。ビールやワイン、洗剤やシャンプーも量り売りの形態で、再利用可能なボトルに充填して持ち帰る方式だ。加工食品や冷凍食品の梱包用トレイも、堆肥として自然分解される素材が使われている。

欧州では、他のスーパーマーケットチェーンでも、プラスチックフリー店舗の開発を進めているが、その方向性は、野菜、果物、肉、魚などの生鮮品は未包装のまま販売する、昔の八百屋に近い業態に回帰している。

プラスチックのラッピングや発泡スチロール容器の代替品を採用する方法も試されているが、従来よりも包装コストが高くなる上、商品の外観が見にくくなってしまうため、売上が減少するという結果も出ている。そこで、逆に「未包装(パッケージフリー)」としたほうが無駄なコストを削減して、エコフレンドリーな店舗としての付加価値を高めることができる。

このようなプラスチックフリー店舗は、やがて日本でも認知されるようになり、商品のパッケージよりも中身の品質で勝負する時代に移行するかもしれないが、その正体は昭和の頃には普通にみかけた、八百屋や魚屋のような業態なのかかもしれない。

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