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コロナ失業と在宅勤務で変わるマイホームの価値観

 これまでのマイホーム環境としては、大都市に住むほど高年収の仕事に就けるチャンスが高く、オフィスまでの通勤時間が少なくて済む、職住近接のエリアが人気となっていた、しかしコロナショックによって、その価値観にも変化が生じ始めている。変化の発端となっているのは、失業者の急増である。

米国では、コロナウイルスの感染が拡大しはじめた3月以降の失業者が急増、3月26日の時点で失業保険の請求数は320万件を超して、保険申請を行う役所のサーバーがダウンする事態が起きている。ブラックマンデー(1987年)やリーマンショックを含めた過去の不況と比べても、コロナショックの失業者数は4倍以上の規模になることも予測されている。

雇用統計の先行指標で、4月以降の雇用減少につながる週間の失業保険申請件数は3月28日までの2週間で1000万件増えた。10年から今年2月までの景気拡大局面で増えた雇用者数である2500万人の4割相当が「失業予備軍」として控える。顕在化すれば08年のリーマン危機で失われた雇用者数の870万人を短期間で上回る計算だ。(日経新聞 2020/4/4)

コロナショックによるレイオフは、飲食店やホテルに務める従業員から、航空会社のホワイトカラー職まで広範囲で行われているのが特徴だが、今回の失業者が「次の職」として求めているが、感染リスクが低い在宅勤務形態の仕事である。 そのため、リモートワークの求人情報を専門に扱う「FlexJobs」のサイトには、新規の応募者が殺到しており、コロナ失業者向けに、リモートワーカーになるための心得や、全米各地にあるリモートフレンドリー企業の紹介を行っている。

まだリストラをされていない労働者の中でも、今後の状況によっては職を失うリスクがあることから、「Upwork」などのプラットフォームを使い、リモートで行えるフリーランスの副業を手掛けることが、推奨されはじめている。

フルタイムまたは週に数日の在宅勤務をするリモートワーカーが増えることにより、住宅市場への影響も少なからず生じてくる。リモートワーカーが労働生産性を高める上で重要なのは、家庭内のノイズから離れて仕事に集中するための環境作りであり、ホームオフィス用の個室がある物件への需要が高まると、米国の不動産業者はみている。そのため、都心の狭いマンションよりも、スペースに余裕のある郊外の戸建住宅へと、人気の傾向が変化していく可能性が指摘されている。

在宅勤務者の住宅環境にとってホームオフィスの重要性は、コロナ危機の前から、キッチンや子供部屋と同等レベルで高まっている。家族に邪魔されることなく、クライアントとの電話やビデオ会議ができる個室が求められているのだ。ニューヨークタイムズの記事によると、2018年の新規住宅購入者(23,000件)を対象とした調査では、およそ30%が週1~4日、13%は週5日のフルタイムで在宅ワークをしている。

この結果は、在宅勤務やリモートワークに集中できる住宅環境を求めて、マイホームの購入や住み替えを検討する人が、米国では増えていることを指している。

たとえば、サンフランシスコ拠点の出版社に遠隔勤務するニューヨーク在住のリモートワーカー(4人家族)が、快適なホームオフィス環境を求めてニュージャージー州に引っ越しをするような事例が起きている。これは、東京都心のマンションに住んでいた人が、リモートワークに集中するため埼玉の一戸建に引っ越しをするようなイメージに近い。

新型コロナウイルスの感染リスクは、ニューヨークやサンフランシスコなどの大都市ほど高まっているが、同地域に住む市民の中では、通勤型からテレワーク型の働き方に移行して、感染リスクが低い郊外の住宅へ引っ越したいというニーズが高まってきている。コロナウイルスの感染ピークが過ぎた後も、マイホームに対する価値観は変化してくことになるのかもしれない。

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