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クラウドファンディングは社会を変えると僕が信じている理由

今、MOTIONGALLERYを始めて約8年が経とうとしている。
僕が強く実感しているのは累計30億円の実績もさることながら、それらが確実に社会を変えてきたというインパクトの大きさだ。

これまでに、現代アートや音楽、演劇、漫画、アニメ、ブック、リノベーション、まちづくりなど、多くの社会を彫刻し、豊かにするプロジェクトが誕生し、それらが少しずつこの社会を変化させている。
これらのプロジェクトが社会に、そして個人に与えたインパクトかえあ、僕はクラウドファンディングが社会を変えるものだと信じている。

まずは、映画のプロジェクトを振り返りながら社会に与えたインパクトを見直してみよう。

社会を変えた映画ジャンルのプロジェクト

クラウドファンディング作品で世界で初めてカンヌ映画祭のコンペティションに入ったアッバス・キアロスタミ『ライク・サムワン・イン・ラブ』は、2011年というクラウドファンディングの超黎明期にも関わらず、いきなり最高峰の1つであるカンヌ映画祭のコンペティションに入ったという意味では、むしろクラウドファンディングの社会の見方を変えた作品では有る一方、アッバス・キアロスタミという世界的ビッグネームでもアート志向が強い作家が日本で映画製作をしようとする中ではなかなか資金集めが難しく(3.11が重なったことも大きな要因の1つ)、クラウドファンディングがもしなければ、彼の遺作、しかも日本を舞台にした作品が製作されなかったかもしれない、そんな重要な文化的功績を果たしたクラウドファンディングのプロジェクトであった。

カンヌ映画祭コンペティション作品「寝ても覚めても」につながる、5時間15分という規格外の映画、濱口竜介『ハッピーアワー』は、映画興行の常識として

・人気原作作品が求められる中での、オリジナル脚本
・90分前後が求められる中での、5時間15分という長さ
・人気キャストの出演が求められる中での、役者でもない一般の市民を主役に起用

という、ある意味での禁じてをコンセプトの段階からすでに志向し、「そもそも映画の価値とは何であるか」を問い直す作品となった。当然興行の常識からは外れる事で一般的な資金調達は難しい中で、クラウドファンディングが映画の完成に大きく寄与したと言える。そして、この作品が濱口監督の次回作のカンヌ映画祭コンペティションという快挙につながる事を考えると、その社会的価値は大きいと言えるだろう。

3年間タイの暗黒街に潜伏してリサーチや地ならしを行って撮影し、ロカルノ国際映画祭で称賛された、空族『バンコクナイツ』
見事約1130万円もの金額をクラウドファンディングで集めた本作は、その金額や応援熱量の大きさもさる事ながら、やはり”3年間タイの暗黒街に潜伏してリサーチや地ならしを行って撮影”したという並々ならぬ情熱ぬきには語れない。

映画は本来、作品の為のリサーチや脚本執筆、役作りなどの「プリプロダクション」は重要。そこに時間やお金をしっかりと掛ければ凄い作品が生まれる確率が高まる。しかしながら、「時間やお金を掛ければ”絶対”凄い作品になる」というわけでもなく、製作費を集めるのが大変な現状では最も削りたくなる予算であることも事実。そんな中、空族『バンコクナイツ』はクラウドファンディングで応援を集める事で、見事3年というプリプロダクションもふくめた全体の製作予算を成立させたのである。この作品を機に、クラウドファンディングを有効に活用し、プリプロダクションに時間を丁寧に使い、凄い作品が生まれてくる地殻変動が起きてくるかもしれない。

2018年、映画界を飛び越えて社会現象とまで広がった上田慎一郎『カメラを止めるな』が予算の大きさ、そしてキャストの知名度がヒットの勝率を握っているという常識を覆した。これも、社会現象にまでになった今であれば出資集めの苦労はなくなると思うが、プロジェクトページに書かれている熱いメッセージを見ればおわかり頂けるかと思うが、当時はビジネスサイドからの出資ではお金集めが難しい企画であったのではないか。しかしながらMOTIONGALLERYで”共感”をベースにする事で見事目標金額を達成し、製作された。

まさに、鶏と卵問題でスタックしがちな企画に、推進させるグリーンライトを灯すのは、お金のリターンを求めるビジネスサイドの投融資ではなく、「面白い映画を見たい!」と映画に観客として向き合っている人たちの応援マインドである可能性を大きく示したプロジェクトだった。

クラウドファンディングは映画のレガシーなしきたりを覆した

映画業界はさまざまなクリエイティブ領域の中でもレガシーなジャンルで、業界の常識や見る人の関わり方を変えることが難しい。そんな中でこのようなプロジェクトが、脈々と受け継がれてきて誰も変えようとしなかった潮流を、挑戦的な作家と観客そして我々MOTIONGALLERYと三位一体となって変化させてきたとは言えないだろうか。

これまでに挙げた事例以外にも本当に素晴らしいインパクトを社会に与えた映画プロジェクトが数たくさんあるので、是非MOTIONGALLERYを見てほしいが、
映画製作や上映だけでなく、

■地方の映画館やミニシアターを守る・つくる活動

京都の出町柳に映画×本屋×カフェの融合した新しい映画館「出町座」をつくるプロジェクト(約940万円)

誕生から20周年!大阪のミニシアター「シネ・ヌーヴォ」のリノベーションプロジェクト(671万円)

茨城県瓜連にみんなが気軽に集う劇場『アマヤ座』を(約354万円)

兵庫県、豊岡劇場の再出発(約272万円)

川越スカラ座存続の為、デジタル映写機導入プロジェクト(約247万円)

シネマ尾道存続の為、デジタル映写機導入プロジェクト(約224万円)

■映画をデジタルリマスターし、次世代に伝える活動

映画『狂い咲きサンダーロード』再発見された撮影当時のネガ・フィルムを、ブルーレイ・ディスクで再現します!(約670万円)

■新しい映画体験を創造し、新たな映画ファンを創造する活動

『日本で唯一のドライブインシアターを浜松で復活させます!』(約136万円)

僕が映画に魅せられたひとりでもあることもあってか、MotionGalleryは映画のプロジェクトの成功が目立つ。実際、これまで蓄積してきたノウハウや感度の高い会員の皆様のおかげで、国内で最も映画のクラウドファンディングが成功するプラットフォームになっているのは、本当に嬉しい限りだ。

今回は映画のプロジェクトを紹介したが、実はMotionGalleryが歩んできた8年間で社会にインパクトを与えたプロジェクトは映画だけにとどまらない。次回からは、それ以外のジャンルのプロジェクトをご紹介しよう。

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