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料理芸術の鑑賞対象(ハード-内観)

前稿では、料理芸術の構成要素の一つである付帯物(環境)の中で、建築と照明について、鑑賞法を検討してきた。「Joël Robuchon」をサンプルとしたが、本稿では、その内観の鑑賞法を検討していこう。

料理芸術としての内観

「Joël Robuchon」に入店すると、まずWaiting Roomに行き、参加者全員が集まるのを待つことになる。これがWaiting Roomの内観だ。

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カメラのレンズがF1.7と明るいので、このように壁の赤が映えて見えるが、実際にはかなり照明が落とされた空間で、入室後しばらくの間は真っ暗闇の中にいるような感じだ。

天井からの灯りはなく、壁面照明と卓上の蝋燭で灯りを採る。暗さに次第に目が慣れてくると、徐々に部屋の様子が分かりだす。赤を基調とした壁で、モールディングされていて高級感と落ち着きを感じる。時間とともに目が慣れるのだが、この時間の経過により表情を変えるのは、ワインと同じである。ワインが空気に触れ、最初硬かった表情が次第に開いてくる。これと同様に、このWaiting Roomも表情を変えるのだ。

外界とDining Roomの橋渡しの役割

その後、参加者が揃い、Dining Roomへ移動する。ここで気がつくことがある。Dining Roomも相当照明が絞られていることに。

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これもカメラのレンズの明るさのおかげで、しっかり写っているが実際は、相当暗い照明だ。しかし、戸惑うことはない。なぜならば、すでにWaiting Roomで室内の暗さに目が慣れているからだ。

ということは、Waiting Roomには単に「待つ」ということ以外にも役割があるということになる。それは、外界とDining Roomの橋渡しだ。Waiting Roomの橋渡しには、2つの役割がある。

1.明るい外界(日常)から、照明を絞ったWaiting Room。そして、暗さに目が慣れた状態で、照明を絞ったDining Roomへ。

2.喧騒の外界(日常)から、とても静かなWaiting Room。そして、食器の音、来客の会話が聞こえるDining Roomへ。こちらは「動⇒静⇒動」だ。

このように、Waiting RoomからDining Roomへ移動することで、様々な解釈を行うことができる。既に述べてきているように、この解釈こそが「鑑賞」である。実際の料理を楽しむ以前に、ここまで料理芸術を鑑賞することができる。

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牧田 幸裕 名古屋商科大学ビジネススクール 教授

名古屋商科大学ビジネススクール 教授。専門は、経営戦略、マーケティング、デジタルマーケティング、ラーメン。日経COMEMOキーオピニオンリーダー

COMEMO by NIKKEI

日経が推す各業界キーオピニオンリーダーたちの知見をシェアします。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 はじめての方へ→ https://bit.ly/2DZV0XM 【...
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