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いまこそマズローに聞け


 今、AIなどのテクノロジーが急速に進歩し、グローバルな社会の変化の中で、人に求められることも、大きく変わりつつあります。変化が大きい時代だからこそ、人は変化に前向きに挑戦することが求められます。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46719530Y9A620C1TCR000/

 この20年間の科学的な知見によれば、自ら工夫して道を見つけ、困難にも立ち向かい前進することこそが、人の幸せや生きがいの根幹にあることが明らかになってきました。そして、そのような心をもっている人は、他の人をも幸せにする行動を起こし、心身の健康度も高いことが知られています。これが、上記の記事にある「心の資本」という概念です。持続的な幸せや充実感は、けっして楽して得られるものではないわけです。
 実は、私が子供の頃、何かのたびに親から言われた「為せばなる、為さねばならぬなにごとも」という上杉鷹山の言葉や「情けは人の為ならず」などは、人が幸せになるためのこの科学的知見にまさに沿ったもので、これは先人の知恵だと思います。
 残念ながら、昨今の風潮では、これほど大事であるにも関わらず、「為せばなる」「情けは人の為ならず」などの大事な指摘が、「精神論」といって軽んじられる傾向がないではありません。しかし、AIと変化の時代だからこそ、我々は今の時代にあった形で、これを取り戻し、高めることが大事だと思います。

 アブラハム・マズローは、人間の要求には、6つの段階があることを指摘しました。生存や安全などの生きるために直接必要な提示の要求から、帰属や承認などの社会的なつながりなどの中間的な要求に加え、さらに上位に、自己実現(生きがいや働きがい)や他の人のためになる(自己超越)があるとされてきました。

 ここで大事なのは、この6つの要求は、どれも我々が生まれた時から本能的に持っている要求だということです。上位の要求だからといって、人格者だけにある要求ではないのです。ひとりの力では生きていけない我々が、集団として、より大きな力を発揮するために、人類は脳を発達させました。獲得した獲物を、独り占めするのか、周りにも与えるのか。これは原始人類に既にあった問題で、人類は周りにも与えることを本能的に選択するようになりました。そのような遺伝子をもった集団の方がより繁栄してきたからです。

 これまでのテクノロジーは、我々の基本的な生存や安全を脅かす要因を排除し、低次の要求を満たしてきましたて。さらに最近では、ソーシャルメディアなどを通じ、中間の帰属要求や承認欲求を満たすことをテクノロジーが助けてきました。

 そしていよいよ、最上位の、そして、最も人間として大切な「生きがい」や「利他」をテクノロジーが支援する時代が来たのではないでしょうか。最新のテクノロジーは、単に人の生活を便利にしたり、いいね、を共有したりすることを超え、我々の心の充実に関わるものになっていきます。そして、それは、AIや変化の時代に、必然的な流れだと思うのです。

 

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矢野和男(日立製作所フェロー)

AIと人間社会行動や幸せについて研究しています。これがAIと合わさって大きなな変化をもたらすと考えています。著書『データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』http://amzn.to/1mgfZHF http://bit.ly/Unmhs6

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コメント1件

個人レベルでの”保身”を超えて、同じ時間を共有する他者や、次の時代の他者への想像力が問われそうです。また、個人を超えた大きなレベルでの保身、すなわち”人間至上主義”を超える必要があると思います。まず、人工知能研究者が”知能”を人間だけのものと考えるのを改める必要があると思っています。(タコの知能に学べるか?)
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