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ワクチン接種率向上に必要な、サイエンスコミュニケーション

意外と増加しないワクチン接種率

 コロナのワクチン接種、皆さんはどうしただろうか?すでに接種済みの方、これから接種予定の方など、さまざまないらっしゃるだろう。希望的には、ワクチン接種率が日本でも向上し、早くマスクを外して外出したいところだ。

 ところで、そのような日は来るのだろうか。ワクチンを供給する側の政府は、「10~11月」にワクチン接種を終えたいと述べている。

ところで、この「全希望者」とは、日本在住者の何%になるのだろうか。すでに報道されているように、若者の中には、ワクチン接種に慎重な人もいる。

この記事では、

年代別の回答をみると、20代は男性の50.1%、女性は58.7%が「したくない」「様子をみたい」などと答えた。60代の男性15.1%、女性25.3%を大きく上回った。

となっており、20代は約半数がワクチン接種に対して、あまり積極的ではない。

丁寧に説明し、きちんと考えることは重要

 今回のワクチン接種は、日本国民に平等にワクチン接種の機会を与えて、接種を受けるかは国民一人一人の判断である。この手法はとても美しい。しかし、この国民一人一人の判断により、日本のワクチン接種率が低い結果になったらどうだろうか?

この記事にあるように、接種率が低ければ、また感染者数が増加し、医療を圧迫し、ストレスの多い生活が続く可能性がある。この3か月間、ワクチン接種に対して行った取り組みも、水泡に帰するかもしれない。

 つまり、これからはワクチンの「供給」「接種の仕組み」と同じくらいに、今重要なのは、「一人一人の判断」を適切に行ったもらうことなのではないだろうか。

サイエンスコミュニケーションという言葉

 私も科学者の立場として仕事を行うことがあり、近年「サイエンスコミュニケーション」という仕事や、「サイエンスコミュニケーター」という役割を気にするようになってきた。

 科学や技術の進化は日進月歩である。その科学の進化を科学者・非科学者の立場に関係なく理解することは重要だ。今までは、科学は「科学者の世界」で閉じて会話をすることもあっただろう。しかし、「科学の進化」は、全人類への影響があることが多く、その科学を利用するかどうかは、科学者の判断のみではなく、全人類の判断であるべきだ。このような背景から、「サイエンスコミュニケーション」という言葉は生まれてきた。

 例えば、原子力発電について、丁寧に良い点、悪い点、残されている科学的な課題について、サイエンスコミュニケーションを行ったかといったら、十分ではなかったかもしれない。このように、サイエンスコミュニケーションが必要な科学テーマは増えていると思う。

 今回のワクチン接種もサイエンスコミュニケーションが必要なのだろう。個人個人が、ワクチン接種をするか判断するのに十分な「科学的な情報」を、「適切な情報空間に配置」しているだろうか。これからは、このことが重要テーマになる。

エコーチャンバーの理解は、コミュニケーションのカギ

 今回多くのメディアで、若者のワクチン接種を抑制している理由として、多くの「デマ」の存在を挙げている。それは。事実だろう。そして、多くのメディアや関係者が、このデマの誤解を解消する情報を提供している。これも、重要な取り組みだ。しかし、実はこの取り組みが、「デマ」を信じている人に届かないことに気づいているだろうか?

 私も、この間、タクシーに乗った時に、その運転手にこのようなことを聞かされた。

 私はワクチン接種受けたくないんですよ。テレビ見ると、受けたほうが良いって報道ばかりなのですが、SNSではは、副反応の話題が多くて。

この「SNSでは、副反応の話題が多くて」が、重要な点だ。

 SNSには、「エコーチャンバー」という機能がある。twitterやFacebookなどで、自分が興味のある記事に反応(詳細を読む、Re-tweetする、いいね を押す など)すると、その記事に似た記事が多く登場するようになる。結果、自分の周りには、同質の記事やコメントが増える。

 エコーチャンバーとは、閉ざされた空間で、自分が声を出すと、その声が壁にぶつかり自分の耳にエコーとして届く。結果、自分の声を、他人の声と誤解をすることである。この現象が、今回のワクチンに関する情報にも起きていると思う。

 つまり、今回ワクチン接種について、適切に個人が判断を行ってもらうために、「サイエンスコミュニケーション」が重要だが、そのコミュニケーションをどのように、どのようなメディア、方法で行うかも重要なテーマなのだろう。これについて、多くの専門家で知恵を絞ってもらい、日本のワクチン接種が適切に進むことを期待したい。

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