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地方発ベンチャーは、"Born Global & Niche Top"を志向して人材育成すべし


ASCIIに掲載された短期連載「日本が目指すべきエコシステムのありかた‐第1回‐」が面白い。将来、ユニコーン企業へと成長するようなスタートアップ輩出を目指したエコシステムの在り方について、内閣府政策総括館の石井芳明氏へインタビューしている。

そのインタビューでは、従来の工業団地や施設を整備するハコモノ行政に走るのではなく、コミュニティ作りに投資をすべきであると語っている。特に、海外でもみられるように都市部でのコミュニティ形成が重要だと語っている。そこで名前が当たっている都市部とは、「渋谷」「日本橋」「大阪」「名古屋」「つくば」という、産・学・官とイノベーションに必要なリソースの整った人口密集地域だ。国の方針として、このような大都市の中核地域に対して投資していくことは合理的な判断だろう。

その一方で、コミュニティ作りに投資をすべきだという話は、何も国の行政方針に限った話ではない。新たな産業を作っていくことは、人口減少社会に直面している日本のすべての都市において共通する課題だ。スタートアップを生み出すのに、コミュニティ形成が重要であるというのであれば、各地方都市の行政担当も本腰を入れて取り組んでいかなくてはならない。

地方に人がいないは本当か?
絶対数という意味では、東京にはありとあらゆるタイプの人材が揃っていると言える。ヒトが揃っていると言うことは、非常に強いアドバンテージだ。その反面、デメリットも存在する。
前述したASCIIの同連載第2回では、株式会社フィラメントの代表取締役CEO 角 勝氏は、スタートアップを生み出すエコシステムを作るには、「全体像が把握しやすいこと」と「観測範囲を広くすること」が重要だと指摘している。

東京には、たしかにヒトが多く、目立つ人材も揃っている。その反面、都市の規模が大きすぎてしまい、誰がハブとなって誰と誰が繋がって新しいものが生み出されるのか、全体像が見えにくくなっている。関西や福岡だと、キーパーソン同士のつながりが強く、どのようにイノベーションが起きるのかという全体像が見えやすい。キーパーソン同時のつながりが強く、全体像が見えると言うことは、スピード感が早くなる。「〇〇という新事業をしたいけど、法律を違反していないか確かめたい」というときに、法律の専門家として誰に相談したらよいのかがわかるし、チームアップもしやすい。
人口規模だけを見るなら、東京は人口が多いが必要以上に集まっているという見方もできる。サンフランシスコの都市部の人口は約86万人で、日本で言えば大阪府堺市と同程度だ。スタートアップが盛んなエストニアの首都タリンの人口は約42万人であり、長崎市と同程度だ。スタートアップのエコシステムを作るのに、人口だけを見るなら42万人いれば十分であり、あとはその都市に住む人たちの質を高める、変革していくことが要諦となる。つまり、地方こそ若年層の教育と社会人の人材育成に投資をしなくてはならない。角氏が指摘するにように、アクセラレーションプログラムが盛り上がっているところは、担当者が歯を食いしばっているという状況だが、補給の立たれた南方戦線のような現場を放置してはいけない。

観測範囲を拡げろ
では、どのような教育や人材育成が必要になるかというと、角氏が語るように「観測範囲を広げる」ことが重要になるだろう。東京や大企業勤務から地方に来ると、発想のスケールが小さいこと、地元密着という言葉を盾にして発想が引きこもっている人の多さに驚く。少し前に、留学生を対象としたビジネスプランコンテストに参加したとき、どの発表も成長曲線の予想売上高が2億円以下なのに驚いた。2億円なんて、パガーニ・ゾンダを1台売ったらお仕舞いの金額だ。この理由は、「まずは地元で小さくビジネスを成功させることを目指します」というスモールスタート信仰が強すぎるためだ。
経営学的には、近年大きく成長をおさめるスタートアップの特徴として、ボーングローバル企業(Born Global Companies:設立時からビジネスモデルが世界市場を志向している企業)であること、ニッチトップ企業(規模の小さい隙間市場において、圧倒的なシェアを誇る企業)であることがわかっており、注目を集めている。しかし、残念ながら、その知見はスタートアップの現場には活きていない。
発表者には地元企業や行政のインキュベーターが指導しているのだが、留学生の観測範囲が狭く、スケールを拡げることができていない。スモールスタートで地元密着から始めることには、もちろん良いことも悪いこともあるのだが、少なくとも新産業を作ることや地方創生の役に立つことはほとんどない。
地方都市からスタートアップのエコシステムを作るには、起業をしたい若者と支援をする行政や民間企業のインキュベーター/アクセラレータ―の観測範囲を広げることが急務だ。

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大分大学経済学部の講師(人的資源管理論)をしています。採用や育成などのタレントマネジメント、地方創生・地方発ベンチャーなどの話題を中心に取り上げていきます。自動車メーカーやシンクタンクを経て、30代で大学教員とジョブホッパーです。 ※日経のキーオピニオンリーダーに選出されました。
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