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空港内でアニメーション映画祭? 新千歳が地方発信で成功する理由

11月はじめ、「新千歳空港国際アニメーション映画祭」に参加しました。スタートから5年目、まだとても若い映画祭です。
『ペンギン・ハイウェイ』の石田祐康監督や、中国のアニメーションブランド「ハオライナー」を率いる李豪凌さんのトークの聞き手を務め、「2000年代に設立されたアニメスタジオの動き」について自身でも講演をしました。新千歳はプログラムの充実とアットホームさでとても注目されており、僕もそんな雰囲気を満喫しました。

ところで「空港で国際映画祭」と聞いて、どう感じるでしょうか? そんな場所できちんとした映画祭が可能なのか、と思うかもしれません。

僕もそのひとりでした。実は最初は、「空港内で国際アニメーション映画祭? キワモノじゃない」と思ったのです。

ところが上映リストに並んだ作品、ゲストに驚かされました。世界のトップクラスのアニメーション映画祭に匹敵するのです。

映画祭の成功の理由のひとつは、このプログラムにあります。アートと商業のバランスのよさ。ただこの表現は正しくないないかもしれません。主催者はむしろジャンル分けをせずに、アニメーション表現の楽しさや素晴らしさを伝えようとして、結果そうなったからです。

従来のアート/商業、国内/国外、インディーズ/スタジオといった先入観に捉われないことで、幅広い来場者を惹きつけています。そんな新しさを東京でない場所から発信するのに意義があります。開催5回目で、4日間で過去最高3万8000人の来場者の背景にはそんなことがあります。

また映画祭に来てみると、空港という立地が、意外なほど映画祭向きであることが分かります。空港に隣接した巨大なショッピングセンター、そこに複数のスクリーンがあるシネコンやセミナースペースがあります。空港の賑わいとは対象的に静かで落ち着いた空間です。
空港に隣接するホテルは、ゲストの宿泊と会場へのアクセスをスムーズにします。さらに空港内には温泉まであります。

新千歳の特長のひとつは、海外からノミネートされたアーティストのほとんどが会場に来ていることです。世界でトップクラスの監督もです。
これも映画祭の雰囲気と評価に加えて、空港という立地が大きな役割を果たしていそうです。空港に着いてすぐに会場ですから、驚くほどアクセスがいいのです。新千歳には海外からも飛行機が乗り入れているし、羽田からを考えても首都圏の郊外よりもむしろ楽なぐらいです。

いま全国で盛んな地域起こしは、集客が弱い場所で大きなイベントを実施して、地域への波及効果を期待することが多いようです。ところが新千歳はもともと人が行き交う場所、人が極めて多い場所です。ただ文化の香りはあまりません。
交通の要所であること、集客機能を活かすことで、映画祭はさらに盛り上がります。従来の地域振興とは異なる逆転の発想です。

これまでの成功を受けて、映画祭は来場者数だけでなく規模も拡大しています。開催5回目にて、コンペティションにはこれまでの短編部門、ミュージック部門、日本部門の他に、長編部門と学生部門が加わりました。国内でほかにない総合アニメーション映画祭として、新千歳の躍進がまだまだ続きそうです。

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ジャーナリスト。アニメーションを中心にエンタテイメント産業について、見て、聴いて、そして伝えています!
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