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メンバーシップ雇用だからこそ学び続ける姿勢が問われている

最近のニュースとして、富士通の2850人の早期退職とジョブ転換が話題だ。45才以上を対象としたリストラクチャリングの施策だとして、世間を賑わせている。

一方、スタートアップへの転職が上場企業を超える年収相場になったというニュースも話題になっていた。


最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けて多くの企業がやっきになっている。僕のところにも一定、そのような相談がやってくる。DXが何を指しているにしろ、事業ができた頃とは違う環境や不確実性があれば適応していかないといけない。

つまりは、今までの仕事とは違うことをしなくてはいけないようになる。

ところが、多くの歴史の深い企業で「やったことのないこと」に挑戦する力が弱くなってしまっている。

新しいことを怖がる気持ちが出てしまうためだ。

新しいことをやると当然失敗もするし、恥ずかしい思いもする。年齢が下の人のほうができることだって当然ある。そういうことができなくなってしまっているように思われる。

しかしよくよく考えると不思議だ。

日本企業は従来、このように新しいことに挑戦して改善を続けられる力があるとされてきた。それは終身雇用を前提としたようなメンバーシップ雇用や総合職、多能工といったフレーズによく現れる。

一方、北米はジョブ雇用と呼ばれる「どんな仕事をやるのか明確に定義した」雇用が一般的だ。社内異動も転職するように面接が組まれる。解雇規制も緩いので、常に成果や自分のキャリア形成について真剣だ。日本においては転職をしながらキャリアを作ることの多い、IT人材はこれに似ている。実際、IT人材の採用の際のジョブディスクリプション(採用要件)はかなり細かい。

一方、メンバーシップ雇用では、解雇される心配はそれほど強くない。解雇規制が厳しいからだ。だからこそ、スキルをじっくり育んでいけるし、だからこそ今までと違うことでも必要に応じて学んでいくことが求められるという「建前」だった。

でも実際には、どうなんだろうか。

20代のやりたいと考えることを正しく判断できずに、ほとんど近年のトレンドを勉強していないような40代以上がたくさんいる。

そういった変化を嫌う人々が、失敗を嫌う人々が意思決定者になってしまっているから、給料は高い割に事業の変化をリードできないということになっているところも多いのではないだろうか。

そういったことの成れの果て、行き着く先が先の富士通のような例なのかもしれない。

僕はこういった動きを悪いものだと思っていない。

「ポータブルスキルがなくて優秀ではない日本の大企業の45歳以上。転職もできずに路頭に迷う。」こんなイメージを持つかもしれない。

実はそんなことはないだろうと思う。

変化を嫌うマインドが染み付いているが故に、組織の圧力で「無能にさせられている人」はたくさんいるだろう。

でも、個々人の能力は優秀な技術者もビジネスマネージャーも実はこういう層にたくさんいる。彼らのナレッジやリレーションを必要としているスタートアップはたくさんある。現状を乗り越えて、流動性が学び続ける意欲やきっかけを作り出すからだ。

メンバーシップ雇用は事業戦略の都合で仕事の内容ががらっと変わっても、それにキャッチアップしていくことが求められるというめちゃくちゃに学ぶ姿勢が問われる雇用形態だ。簡単に解雇できないからこそ、変化に強く、ロイヤリティをもって全体最適に望める。でも、このメンバーシップ雇用を多くの企業が使いこなせていないように見える。

一部のIT企業では、スペシャリスト人材をフリーランスや契約社員として短期雇用することで、高い報酬を実現しながら流動性を確保している。同時にメンバーシップ雇用(正規雇用)のスタッフには、そういったスペシャリストからどんどんとスキルを吸収することが求められる。このようにジョブ雇用的なものとメンバーシップ雇用を擬似的にでも併用することで、それぞれの利点・欠点が実感を持って理解できるようになる。

いずれにしても、富士通の件は多くの企業にとって衝撃的な事例になるだろう。うまくことが進めば、単なるコストカットではなく、変化を嫌う人や変化に対応できない人がガツンと減ることになる。学ぶ意欲・変化するマインドを持つ人だけが残るからだ。一方で、隠れたスキルが市場に流動性を持って現れる。これらが会社や社会にどんな変化をもたらすのか。そして、メンバーシップで雇用されている人々に学びの姿勢をつくることになるのか。

良いきっかけになることを願うばかりだ。


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エンジニアリングと組織の関係について、より多くのビジネスパーソンに知っていただきたいという思いで投稿しております!

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広木大地(日本CTO協会理事/レクター取締役)

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