高齢者人口増加率

社会保障費の自然増は、5300億円に

今年も、来年度予算の概算要求基準を示す季節になった。国の一般会計での最大の経費である社会保障費は、要求段階での自然増を5300億円程度とする方針である。

ここでいう自然増とは、制度変更を一切しなくても、高齢化の進展により医療・介護・年金などの社会保障費が自ずと増える金額(のうち国の予算から出す経費の分)を意味する。高齢者の増え方が小さいと、自然増の額も小さくなる。

この自然増は、2019年度予算では6000億円だったが、2020年度予算では5300億円となる見込みで、700億円も減るのだが、それはなぜか。

それは、冒頭の図が理由を物語っている。75歳以上人口増加率が、2019年度までは3%近くだったのが、2020年度には1%強に低下する。それだけ、75歳以上人口は2020年度に増えない。というのも、2020年度に75歳になるのは1945年生まれの人だが、その数は多くない。2021年度には、その増加率は0.5%に下がる。ちょうど、団塊世代のすこし年上の方々が75歳以上になるのが、来年と再来年ということになる。

しかし、その後の75歳以上人口増加率が急上昇する。まさに、団塊世代が75歳以上になる2022~2024年度には、年率4%超の増加率になり、そのときには、社会保障費の自然増はかつてない大きさになると見込まれる。

これまでの安倍内閣での予算編成では、社会保障費の自然増の金額までの予算要求を認めつつ、最終的に予算案では約5000億円の増加にまで絞り込んできた。2019年度までの予算編成では、6000億円以上の自然増を認めつつ、5000億円の増加にまで予算要求を圧縮し、毎年度1000億円以上の社会保障費の見直しをかけてきた。

2020年度の自然増は5300億円なので、300億円(例年の3分の1以下)の圧縮で済む・・・とみていいか否かは、今後の内閣の方針次第である。

前述のように、2022年度以降の自然増は、6000億円台どころの大きさではないことが予想される。7000億円という自然増になるかもしれない。そのときに、2000億円もの社会保障費の圧縮をするのだろうか。それを避けるには、自然増が少ない年度に、むしろきちんと社会保障費の見直しをかけて、自然増の圧縮に「貯金」をつくっておくのがよいだろう。

社会保障費は高齢化で増えるものの、その増え方を抑えることで、国民の税負担や社会保険料負担をより軽くすることができるのだ。

#COMEMO #NIKKEI

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土居 丈朗(慶應義塾大学経済学部教授)

東京財団政策研究所上席研究員を兼務。近著『入門|財政学』日本評論社刊/ 東洋経済ONLINE「岐路に立つ日本の財政」http://j.mp/TYKOLTD / Yahoo!ニュース個人「経済財政の核心に迫る」http://j.mp/Ytdoi

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