クーレECB理事講演の真意

昨日はクーレECB理事の発言が材料視され、ユーロ売りが進みました。講演中、クーレ理事は「ユーロ圏の現在の回復は主に内需にけん引されているため、世界的な金融危機後と比べて、ユーロ高が成長に及ぼす影響は小さなものになる」との認識を示しており、ECBスタッフによる仔細な計量分析も用いながら為替レートが国内物価にもたらすパススルー効果は落ちていることも提示しています。それはつまり、ユーロ高が進んだからといって域内物価が下押しされるとは限らず、「そもそも域内経済の強さに根差した金融引き締め(とそれに応じたユーロ高)であることを思えば、ユーロ高を跳ね返すだけのインフレ圧力はあると考えるのが妥当」というメッセージです。

 ですが一方、ユーロ高が長引けばやはり看過できない影響をインフレ率にもたらすとの懸念も示しており、市場はこちらの発言を材料視しました。実際、「ユーロの対ドル相場と米独の長期金利格差が乖離し始めていることは、そのような状況(ユーロ高が長引いてインフレ率が下押しされる状況)に入りつつあることを示唆している」という図表入りのコメントはなかなかクリアなユーロ高懸念だと思います。講演の構成からしても、パススルーを議論する段落の結語部分がそのような懸念を示す姿勢で終わっておりますので、やはり市場に与えるハト派的な印象は小さくなかったと言えます。

政策理事会での議論の叩き台となる案を作るのが役員会であり、その役員会で重要な役割を果たすクーレ理事からこのような情報発信が行われていることは10月26日会合のイメージ作りをする上で重要な手掛かりになるでしょう。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-09-11/OW3YZM6S972901

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-09-11/OW3YZM6S972901

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