見出し画像

好調からの凋落! 4つの兆候を見逃すな。

スタートアップは、ときに「頑張る→突破口が開ける→さらに頑張る→すごく伸びる→ある日突然暗転」という変遷を辿ることがあります。ポイントは「ある日突然暗転」ではなく、その前段階の「すごく伸びる」だったりします。

どれくらい伸びるのかというと、前年比30%成長というような高成長ではなく、前年比300%成長というような「桁が外れた急成長を遂げる時期」があったりするのです。この急成長期に潜む無理が限界を超えたとき、ある日突然、モメンタムが反転してしまうことがあるのです。

そうすると、急成長が一定程度続いていることを前提に事業計画を作っていたりするので、もともとキツかった目標達成が致命的に難しくなってしまったりします。これまで好調だっただけに、「どうにかして目標を達成しよう」と焦って近視眼的になり、長期のことや本質的なことを後回し、当月の売り上げしか見えなくなり、不要な出血を増やしながら、さらに深み嵌まっていきます。これが、長い凋落傾向のはじまりです。

この凋落を引き寄せてしまう兆候は、コトとヒトに潜んでいたりします。

凋落の兆候@コト篇


コト、つまり事業において現れる兆候は、とくに、顧客に関する部分で色濃く表れます。(守屋は、経営に大事な要素を分解して話すときに、イシ、コト、ヒト、カネに分けることが多いです。コトは事業のことを指しています)

兆候①、急激な成長に必死で、いつの間にか起きている顧客が変化に気づけない。

兆候②、顧客をグロスの数字で見るようになり、顧客の手触り感を失う。

兆候①は、急激な成長によって、すべてが「雑」になっていくなか、本来じっくり向き合っていれば容易に気づくであろう顧客の変化に気づかず、もしくは、うっすら気づいていも構っていられずに突っ走ているなか、症状が悪化をしていきます。

事業の開始当初は、事業規模が小さいために顧客との距離が近く、また、そもそも自分たちと近しい距離にあるターゲットから顧客化していたり、そこまでの関係性が無くても、新しいものに反応しやすいイノベーターやアーリーアダプターが顧客だったりします。そのために、「我々が提供するサービスや商品を応援する気持ちのある人」が、顧客だったりします。

しかしながら、事業が成長していくと、顧客が「アーリーマジョリティ」に変化をしてきます。これまでの顧客と、これからの顧客に何の差分もなければとくに問題は起きないのですが、たいてい、そこには差分があります。たとえば、「応援の気持ちとは違う、懐疑的な診立てが混じってくる」とかです。そういった差分が何なのか、その差分を受けて我々はどう変化進化していくことが大事なのか。そこに向き合う余裕がないと、知らず知らずのうちに、顧客の満足に不足が生じてしまうことがあります。

兆候②は、兆候①の原因であったり、加速要素だったりします。

急激な成長で顧客が増え、組織が大きくなっていくなか、これまでは見れていた顧客の個性が見えなくなり、日次、週次、月次で上がってくる数値速報に頼る割合が増えてきます。

顧客に関す会話が、「顧客数、売上成長率、顧客獲得経路、顧客獲得単価、離脱率・・・」など、顧客の顔が見えないグロスの数値データになってしまっていたりします。

一定程度は仕方ないことではありますが、顧客の現場との距離が離れていくなか、いつの日か、バイネイムで呼べる直近顧客がいなくなり、色鮮やかにエピソードを語れる直近顧客がいなくなっていたりします。

これらの「コト」に潜む兆候を看過せず、好調からの凋落を回避すべく、手を打っていくことが大事だと思います。

凋落の兆候@ヒト篇


ヒトや組織において現れる凋落の兆候は、いくつもあります。守屋は「起業における最大の難所はヒトと組織の問題」だと思っていて、事業の成長過程において、良くも悪くも避けて通れない、人や組織に関する山場や谷場があると思っています。

それらのなかから、とくに「好調からの凋落」のシーンにおける頻出の兆候があります。

兆候③、会社の成長と個人の成長のミスマッチ

兆候④、古株と新人の想いのズレ、処遇の逆転

兆候③は、急激に成長する事業、拡大する組織、複雑化し高度化するエトセトラ、これらが一度に短期間で起きるときに、「会社と各個人の、成長の足並み」が揃っていればよいのですが、現実には難しかったりします。自分自身はほとんど変わっていないのに、会社だけが成長してしまい、なんらかの不具合が起こることはよくあるケースです。

個人の成長が追いつかなければ、その分、採用することで賄えばイイのですが、イイ人はどの会社でも欲しくて争奪戦。現実は、なかなか簡単には採用できないうえ、たとえ採用できても、新たな問題が起きることもあります。

兆候④は、兆候③の、「新たな問題が起きることもある」にも関連する話しだったりします。

組織が大きくなるということは、当然、社内に古株のメンバーと新たなメンバーが混在し始める、ということです。同じ会社、同じ事業に魅力を感じて参画しているはずですが、実はそこには、大きな差分が存在していたりします。例えば、古株の人は、「まだ何者でもないし、先もまったく見えていないけど、でも、この事業が好きっ!」と思って夢に賭けて参画をしていたりします。

一方、新たなメンバーは、「事業が急成長、注目されてキラキラしているこの会社がスキっ!」ということで参画をしていたりします。

ここに差分が生じ、それが良さを生むだけでなく、悪さを生むこともあります。

そして、兆候④がもっとも色濃く表れるのは、古参役員と、新マネジメント層の想いのズレ、処遇の逆転だったりします。非常に繊細で難しい問題で、予見されていながらも避けることが出来ずに突っ込んでいくこと多い難所だったりします。

好調からの凋落のなか、この①②③④の合併症が起こることで、さらに問題は複雑化していきます。

「物事は放っておくと乱雑・無秩序・複雑な方向に向かい、自発的に元に戻ることはない」というのが「エントロピー増大の法則」というものがあります。これは経営においてもいえることだと思います

企業が成長するなかでは、必ず今回挙げたような現象が起きます。急激な成長には付き物なので、どうしたって起きてしまうものだったりします。

では、どうしたらよいか?

それは、「備える」ことです。

「これらは起きる」という前提のもと、先手先手を打ち、複雑化が進まないように備えることが、とっても大事だと思います。


この投稿は、

を読んで、「スタートアップの躓きあるある」として書かせていただきました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?