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複業の最大の価値は、「自分の人生を取り戻す」こと #複業の教科書

今週からスタートしている『複業の教科書』の #全文連載

好評発売中!の『複業の教科書』を毎日連載するカタチで全文公開中です。

前回、第5回はコチラからどうぞ。

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安全地帯を確保したまま、複業でチャレンジができる

 複業は、本業という安全地帯を確保しながら、いわば〝お試し〟で「やりたいこと実験」ができるので、向き不向きの判断材料を得られます。

 もし、「やりたいことをやってみたら、向いていなかった」といった結論となったとしても、中長期のキャリアのためには大きな収穫。複業で分かってラッキーだった!くらいに思えばいいのです。

 会社を辞めて転職先で気づいて「後の祭り」になってしまうより、ずっとマシです。

 仕事を試す、〝試食〟ならぬ〝試職〟ができるというメリットは、実は日本の雇用環境の欠点を絶妙に補っています。

 日本企業の典型的な人材育成といえば、新卒一括で大量採用をした若者を、2、3年おきに部署異動させて、20代のうちに3つくらいの「異なる仕事」の経験をさせるジョブローテーション。

 その中でキラリと光る資質を発見できれば、それを伸ばし、コアスキルとして鍛えていく。

 これが日本の人材育成の王道でした(注:新卒一括採用のルールも今後は根本から変わっていきますが、ここでは説明を省きます)。

 これはこれで効率的なシステムだったと僕は思うわけですが、残念な点を一つ指摘するとしたら、入社10年以内にジョブローテーションで経験できる「異なる仕事」の種類は多くて3つくらいにとどまるということです。

 3つの中にたまたま本人の希望や適性にピッタリの仕事が含まれていたらいいのですが、その確率は決して高くはありません。希望の異動先を上司や人事に伝え続けても、それがかなえられる保証もありません。

 仕事の向き不向きを測るジョブローテーションを「リトマス試験紙」に例えると、会社員に与えられたリトマス試験紙の数はせいぜい2、3枚程度。しかも、その貴重な試験紙を、「どの水につけるか?」という選択さえも自分で決められないという不自由さ。

 この試験紙の数を、4枚、5枚、10枚といくらでも増やせる方法が、複業なのです。さらに、紙をつける水(職種・業界)も自由に選べます。

 自分が本当に力を発揮できるのはどんな仕事なのか。複業を使っていくらでも試してみることができるのです。

 そして、「これこそ自分の天職かも?」という感触をつかんだら、それを今の会社で実現する道を探るのもよし。
 複業で続けるのもよし。転職や起業にチャレンジするのもよし。

 大決断の前の〝試職〟のチャンスを広げる複業を活用しない手はありません。

複業の最大の価値は、「自分の人生を取り戻す」こと

 他にも細かいメリットはいくつも挙げられますが、すべてを総合して、僕が考える複業最大のメリットを一言に集約してみます。それは、ズバリ。

「自分の人生を取り戻せること」

 これに尽きます。

 自分の人生を取り戻す?

 一体いつの間に、誰に奪われていたの??

 すぐにはピンと来ない人も多いと思います。

 ただ事実として、今の日本では、若者もベテランもシニアも、無意識のうちに「自分の人生を生きていない」人が大多数であるという危機感が僕にはあります。

 人材コンサルティング・リサーチ会社の米ギャラップ社が2017年に発表した調査結果によると、「熱意あふれる社員」の割合は、日本ではたった6%。

 アメリカの32%と比べて大幅に低く、対象となった世界139カ国の中でも132位と最下位クラスであることが示されました。

 後ろから数えて8番目、ワースト8位という悲しい結果をはじめて聞いたとき、僕は打ちのめされました。

一人が一生一社だけに勤める時代は終わった

 なぜ日本人はハッピーに働くことができていないのか。

 1章でも述べましたが、僕は「戦後の高度経済成長期から長く続いてきた日本型雇用文化の悪い部分だけが残されている」ことが大きな要因であると分析しています。

 誤解のないように強調したいのですが、日本型雇用には素晴らしい面もたくさんありました。

 一度入社したら終身雇用が約束され、賃金は年々確実に上がり、老後を穏やかに過ごせるだけの退職金までもらえるという、夢のような約束が果たされてきたのです。バブル崩壊という悪夢が日本を襲うまでは。

 この約束が果たされるためには、社員は皆、長時間労働に耐え、〝個〟を消して会社の色に染まる団結を重んじて、会社に尽くさなければなりませんでした。

 まさに「御恩と奉公」のような関係が、企業と個人の間で結ばれてきた。これが日本型雇用の本来の構造だったはずです。

 企業は、個人が働く時間・場所・内容を制限する代わりに、自社で働く個人に対して「一生安泰」の約束を交わしていました。

 個人もその約束にすっかり安心し、「自分がやりたいことは横に置いて、会社のために何も考えずに働こう」と尽くしました。

 つまり、会社に依存していた、会社に人生をゆだねていた、と言ってもいいでしょう。

 しかしながら、1990年代初めのバブル崩壊を発端とし、日本企業の競争力は減退。IT革命によって世界のビジネスの変化スピードが劇的に速くなり、企業寿命も短命化、少子高齢化により社会保障制度の崩壊が確実となった今、〝約束〟は破られようとしています。

 いや、すでにもう破られていますし、「あの約束は守られるはずがない」と多くの人が気づきながら働いています。

 昨今の長時間労働撤廃、リモートワーク解禁といった流れは、何も個人を守るための施策ではなく、約束を守れない企業の〝白旗〟なのです。
「ごめんなさい。今までのように生涯にわたってあなたのことを養い続けることができません。だから、もっと自分で自分の人生を考えて、生き抜いてください」

 そんな危機感を含むメッセージであることに、多くの人が早く気づくべきです。

複業が認められると、「いいわけ」ができなくなる

 働き方改革の追い風で、かつて企業に縛られていた個人が働く「時間」と「場所」は、解放されつつあります。

 都市部を中心に、会社員も利用できるシェアオフィスはずいぶん増えてきました。

 もう一つ、解放が進むべきなのが、働く「内容」です。

 会社員だって、いつでもやりたいことが始められる時代。その最短ルートが「複業」なのです。

 複業が認められない時代には、会社員が本業以外でチャレンジをしたい時の選択肢は、転職か起業しかありませんでした。
「会社で認められないから」という理由で、やりたいことを諦めていた人はたくさんいるはずです。

 しかし、複業が認められる時代には、個人がいつでも好きなこと、やりたいこと、挑戦してみたいことに飛び込めるようになります。

 それはある意味で、「やりたいことができない」という言い訳ができない、厳しい時代になるとも言えますが、僕はとても希望を感じています。

 不思議に感じるかもしれませんが、次のページの表にあるように、やりたいことを複業として始めた人の多くは本業の満足度も上がります。

 きっと「やりたいことにチャレンジできている」という満足感が、気持ちを前向きにして、本業に対するモチベーションを高めるのです(僕自身がそうでした)。
 あるいは、複業で得られる学びや成長によって、本業でより力が発揮できるようになる好循環が生まれているのです。

「会社員とはこうあるべきもの」という従来の枠組みにとらわれず、じっくりと振り返ってみれば、きっと誰もが一つや二つ、思い出すはずです。
 本当にやりたかったこと。「これが仕事にできたら幸せ」と願ったこと。

 複業ならいつでも、今すぐにでも始められます。
 だから、僕は、この本を通じて多くの人に伝えたいのです。

 複業を始めよう!

 自分の人生を、もう一度取り戻すために。

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続きはコチラ。

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