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「お酒を頼まない人はお断り」という貼り紙に感じたモヤモヤを、パワポで整理しました。

お酒を頼まない人はお断り。

そんな飲食店の貼り紙が、ふと目についた。
なんだかモヤモヤした。

「寿司屋に来て、寿司を頼まないのは失礼」

という理屈はわかる気がする。
でもそれがお酒だと、なぜモヤモヤするのだろう。

そんな気持ちの構造を、パワポで紐解いてみた。

今日はそんな話。

■お酒で分断がはじまる

お酒を頼まない人はお断り。

そんな飲食店のスタンスが気になったのは、まず分断の予兆を感じたからだ。

なんだかここから「お酒を飲む人 VS お酒を飲まない人」という構造を生んでしまう気がした。

寿司と違って、お酒はあらゆる飲食店にある。

(当たり前だが)飲食店は「飲む」「食べる」という2つの機能を持っている。

それ故、飲食店に来る側は

A:(どちらかと言えば)飲むことが主目的の人
B:(どちらかと言えば)食べることが主目的の人

に分かれる。

もちろん「飲む×食べる」が飲食の醍醐味であることもわかるが、Bの中には体質・体調的な理由でお酒を飲めない人(仮にB+する)も含んでいる。

冒頭の飲食店は、このカテゴリの人を顧客から排除している。

もっと言えば、多くの飲食店は複数人での利用を想定している。

しかし冒頭の飲食店からB+さんは排除されているため、Aさん、Bさん、B+さんの3人組が仲良しでも、その飲食店には「AさんとBさん」という「お酒を飲めるグループ」で来店するしかない。


もちろん実際は「じゃあ他の店にしよっか」とすればいいのだが、B+さんは「自分がいることで選択肢を減らしてしまった」と(不要な)負い目を感じるかもしれない。

冒頭の飲食店のスタンスは、私たちを「お酒を飲めるグループ」と「お酒を飲めないグループ」に分断させ(無意識に)人間関係に影響を与えている。

■お酒にまつわる2つ目の軸

別の角度からも考えてみる。

飲食やお酒の業界では「お酒が飲める人」だけを「顧客」と捉えがちな傾向がある。

軸が1つだと単なる分断になってしまうので、ここにもう1軸足してみる。

これにより「お酒は飲めないけど、飲みの場は好き」というカテゴリが誕生する。

さて、この左上のカテゴリはお酒・飲食業界の顧客対象になるだろうか。

このカテゴリを「顧客ではない」と排除するのが、お酒を頼まない人はお断りという飲食店で、顧客として受け入れようとするのがノンアル市場だろう。

だが確かに、飲食店業界で左上のカテゴリを顧客とすると両者にリスクがある。

お客側はノンアルしか飲んでないのにみんなで割り勘にされるかもしれないし、お店側だって平均客単価が落ちる可能性がある。

やはり、お酒が飲めない人は飲食店業界から排除されてしまうのだろうか。

■お酒業界 = 非日常業界

ここでさらに別の角度を差し込んでみる。

「酔う」という言葉の定義についてだ。

酔うという言葉は「アルコールがまわる」という意味の他に「心をうばわれてうっとりする」という意味がある。

つまり「酔っている」という状態は「非日常の状態」ということだ。

そう考えると、お酒や飲食店業界は

「酔わせてくれる業界」

 「非日常」を提供してくれる業界

と、捉え直すことができる。

先日、北海道の小樽で珍しい酒屋さんに会った。彼は酒屋を経営しているのだが、自分は体質的に一切飲めないというのだ。

だが酒屋には立ち飲みスペースがあり、彼も一緒になって楽しんでいた。

「僕はお酒じゃなくて、お酒の場が好きなんですよ」

そう言っていた彼は、こんな捉え方をしていたのだろう。

■非日常にうっとりする酔えるノンアル 

さて、そろそろ整理をする。

お酒を頼まない人はお断り。

という飲食店はお酒を

・アルコールを含んでいるため
・何杯も頼みたくなる
・高価格帯の非日常飲料

と定義をしている。

これを

・非日常にうっとりするため
・何杯も頼みたくなる
・高価格帯の非日常飲料

と、捉え直してみる。

主に飲食店で提供されているノンアルは「ウーロン茶」や「ジャスミン茶」などの「日常飲料」だ。

また現在のノンアル市場のメインはビールやチューハイの代替製品であり、これもどちらかと言えば「日常飲料」のカテゴリに入る。

しかし今の飲食店業界に必要なのは、酔わせる(非日常にうっとりさせる)高価格帯のノンアル飲料ではないだろうか。

これによって体質的にお酒を飲めない人(B+さん)でも、他の人と同じ目的を達成できて、客単価も揃ってくる。

ちなみに、私の家の1階は酒屋なのだが(まだ数は少ないものの)ワインと同じような価格のワイナリーが造ったぶどうジュースも何本か置いてある(美味しい)。

私の小学生の息子は、(離婚して別居しているため)うちに遊びに来るたび、そのぶどうジュースをワイングラスに注いで自宅で非日常を楽しんでいる。

お酒の定義を少しズラすだけで、ターゲットは拡大する可能性があり、最近できたノンアルコールだけのバーも、こうした実験の1つかもしれない。

お酒を頼まない人はお断り。

(高価格帯ノンアル商品が流通、一般化していない)今はまだ難しいかもしれないが、この流れで、そんな貼り紙が1枚ずつなくなっていくといいなと思う。

サポートいただけたらグリーンラベルを買います。飲むと筆が進みます。