ソフトバンクxトヨタ提携の衝撃 〜 ソフトウェアが世界を覆う 〜

4日、次世代モビリティ分野での大型提携が発表された。20兆円を超える日本最大の時価総額を誇るトヨタ自動車がパートナーに選んだのは、NTTドコモでもKDDIでもなくソフトバンクグループだった。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36156960V01C18A0MM8000/?n_cid=SPTMG002

トヨタ側の狙いはなんであろうか? そこには車をつくり販売するだけでは生き残れないという強い危機感が読み取れる。

トヨタの豊田章男社長は4日の記者会見で「車をつくる会社から移動サービスを提供する会社に変わる」と強調。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は「今回は第1弾。より深く広い提携が進むことを願っている」と述べた。

移動サービスを提供する上で重要なことはなにか。それは「呼べばすぐに車がくる」というユーザー体験の質である。それを実現するためには人がどういうときに移動するのか、そのために必要な車はどれくらいか等々、マッチングを効率化するためのプラットフォームとデータが必要になる。現時点で、これを世界で最も所有しているのが、ソフトバンクグループである。

ソフトバンクは米ウーバーテクノロジーズや中国の滴滴出行などライドシェア大手4社の筆頭株主で、乗車回数でみた世界シェアは9割に上る。こうしたシェアサービス大手に対し、トヨタが開発した自動運転車の導入を呼びかけることも視野に入れる。

つまり、将来主流になる移動手段をサービスとして使う「モビリティー・アズ・ア・サービス(MaaS)」の世界において、自動車はサービスを構成するパーツであり、主役はマッチングを提供するプラットフォーム事業者であると言える。また、MaaSの世界が進むほど個人が車を直接所有することは少なくなり、プラットフォーム事業者が主要な購入者となる。特に自動運転車についてはしばらくは数千万円ほどの高額な販売価格となることが予想され、個人が買える値段ではない。よって、投資回収のためにはB2Bでの販路開拓が重要になるだろう。

新会社の座組からも、この力関係が透けて見える。両社で設立する「モネ・テクノロジーズ」はソフトバンクが50.25%、トヨタが49.75%を出資してつくられる。マジョリティを持つのはソフトバンクであり、新社長も同社から宮川潤一氏が送り込まれる。宮川氏と言えば長らくソフトバンクCTOを務め、ソフトバンクモバイルや米国スプリントのネットワーク再建に大きく貢献した人物である。モバイルネットワークの基地局最適化には、莫大な投資が必要だ。最小の投資で最大の結果を得るため、ソフトバンクモバイルが活用したのもデータであった。

https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/interview/610135.html

移動し続けるエンドユーザーと、基地局から発射される電波とを最適化する。この構図はタクシーとユーザーとの関係に似ていないだろうか? ソフトバンクにとってみればMaaS分野で必要な技術の一部は、すでに経験済みなのかもしれない。この提携が将来の我々の生活にどのようなインパクトをもたらすのか、期待は尽きない。

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