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ギアチェンジか自然体か

BOEが16日に発したメッセージにはタカ派方向への明らかなシフトが含まれているように思える。緩やかな形で金融引き締めを継続するという決定はFedやECBによる最近の引き締め加速とは対照的であるものの、新たに示された強力なフォワードガイダンスはより積極的な利上げに道を開いたと言える。ということから、利上げ軌道が前倒しされるとともに、金利が最終的に若干ながらもさらに引き締め的な領域まで引き上げられるのではないかと考える。年内には8月の50bpの利上げを含め125bpの追加利上げが実施され、バンクレートは年末に2.5%に達することになる。もっともBOEの金融政策委員会(MPC)はデータへの依存が極めて強く、インフレ期待と特に賃金伸び率が高水準にとどまれば、利上げの幅とペースを引き上げるであろうことも踏まえておきたい。


ただし、英国では経済情勢が他の国・地域よりも軟調で、GDPが既に縮小を始めていることを考えると、BOEは利上げのペースを速める圧力を、他の中銀程には感じていない可能性もある。とはいえ、他国と同様、インフレデータは強い。今後数か月で鎮静化するとは予想されない。実際、食品価格は引き続きインフレ期待を押し上げる見通しであり、10月に予定されている規制対象のエネルギー料金の上限引き上げも大きな影響を及ぼすことになる。また、GDPの鈍化が労働市場に著しい打撃となるとも思われない。政府による最近の財政政策パッケージも支えとなり、MPCはこうした財政支援がGDPを約0.3%押し上げ、場合によってはより大きな効果をもたらす可能性があるともしている。そうすると、他の中銀程のプレッシャーはないにせよ、英国の金利も上昇する方向性を持つ。

かといって、これ以上の大幅な利上げ(他国比オーバーペース)は想定しない。理由は三つある。第一にBOEはすでに5回利上げを実施し、既に政策金利を115bpも引き上げているなど、後手に回っているとは言えないことがある。第二に受動的な量的引き締め(QT)は既に始まっているが、それを進め、英国債の売却に関するガイダンスを8月に出してくる公算が大きいこと、である。第三にソンダース委員の任期が8月に終了する。後任のディングラ氏の見解は現時点では不明であるものの、タカ派色が弱まる方向に傾いていると思われること、である。

何にせよ、英国の今後の金利政策については、インフレと労働市場に関する経済指標に注目して見ていくことが肝要である。


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