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天気予報を見るように感染症に備える日は来るか

けさ、私は少し衝撃的な記事を読みました。

いま世界的大流行(パンデミック)を起こしている新型コロナウイルスについて、感染症研究で有名なアメリカのジョンズ・ホプキンス大学の報告書が現在起きていることの多くを予想し、2年前に警鐘を鳴らしていた。その内容は世界で十分に生かされず、対策は後手に回っている。(日経電子版2020年3月24日、会員向け記事、登録無料

「分かっていたのになぜ」「きちんと対応していたら」……。SFの世界ならここでタイムマシンの登場。過去(ifの世界)に行って、「しかるべき人たち」の考えや行動を改めさせられるかもしれませんが、もちろん現実には取り返しがつきません。

感染症との闘い繰り返す

さて、人類の歴史は感染症との闘いの歴史と言っても過言ではありません。2019年春からお送りしてきた大型連載「Disruption(ディスラプション) 断絶の先に」。最終回となる今回のテーマは「感染症との闘い」です。

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「患者の隔離」「集会の自粛」「学校の閉鎖」…いま、毎日のようにニュースで流れる光景は、上の年表にある1918年のスペイン風邪(インフルエンザ)の流行時も同じでした。治療薬もワクチンもなく、人類が「見えない敵」に立ち向かう術(すべ)は21世紀の今も変わっていないのです。この100年で科学技術は長足の進歩を遂げたはずなのに、厳しい現実です。

「情報」で劣勢跳ね返す

ところが、そんな人類の劣勢を跳ね返しうる状況に今はあり、感染症との闘いは新たなステージに入った、と指摘しているのが今回の記事です。
人類は100年前と違う何を「武器」にできたのでしょうか。

そう、情報(データ)です。

記事では、新型コロナの感染拡大の予兆を見抜いたカナダのスタートアップ企業のエピソードが紹介されています。それは2019年末。スマホの位置情報をはじめとする数十万にも及ぶデータを人工知能(AI)で分析し、中国湖北省武漢市において「診断されない肺炎」とのキーワードを複数確認していたといいます。世界保健機関(WHO)が「事態を監視する」方針を表明するより前のことでした。

備える社会に変われるか

感染拡大を事前に精緻に予測して、人々にウイルスの脅威を正しく理解し、生活習慣を改めることを促す。個別の対策を最適なタイミングで繰り出すための判断を助ける。「都合の悪いことは考えたくない」人間の深層心理にコンピューターの予測が物事を客観的に捉える視座を与え、人々の行動を変え、結果として手ごわいウイルスに「勝つ」。「情報戦」の理想的な展開はそんな筋書きです。

まさに、備えあれば憂いなし。天気予報を見て備えるように、データ分析で描き出された「起こりえる未来」を見て、感染症の危機に日ごろから備える社会に生まれ変われるかが問われています。

「未来は変えられる」。みなさんも記事をお読みになって、感染症との闘いについて一緒にお考えいただければ幸いです。

「Disruption 断絶の先に」全12部まとめ読みはこちら

先端技術から生まれた新サービスが既存の枠組みを壊すディスラプション(創造的破壊)。従来の延長線上ではなく、不連続な変化が起きつつある現場を取材し、経済や社会、暮らしに及ぼす影響を探ります。

(日本経済新聞社デジタル編成ユニット 澤田敏昌)