エスカレートする米中貿易戦争(2)でも中国人民元下落は続く?

前回の投稿で米中貿易戦争のこれまでとの相違点に触れた。

相違点のもう一つが今回のテーマ、中国当局の反応である。中国政府はこれまで1ドル7.0元をある意味死守してきたのだが、今回は自然体で放置した結果、市場は7.0元の上抜けを容認したと解釈。7.0507まで売られたことは記憶に新しいであろう。結果、米国財務省は中国を為替操作国と認定するに至った。

これまで中国は「為替レートを交渉の武器としない」と繰り返し明言してきたが、このスタンスは変化したのだろうか。

スタンス自体は変わっていないであろうと考える理由として二つ。第一に、6日、陳中国銀行副総裁は、「8月の人民元安は市場が決めており、為替操作と一切関係がない」と述べたこと。第二に、中国中央銀行は通常の金融政策を採用すると明言していること、である。Fedが利下げを実施する一方で、中国が利下げをしなければ、金利差の観点から人民元の対ドル上昇の可能性を高める。人民元安が進んでもそれを相殺する動きがある、と見ているのではないか。

もっとも、急激な人民元安を進展させることは中国当局の意図ではないとしても、緩慢な人民元の下落を当面は念頭に置く必要はある。9月1日の3000億ドル分10%関税導入までに両国が歩み寄る可能性は非常に低く、かつ、結論が出るとなると更に数か月かかることも見ておきたい。不透明感が存続する間は、人民元の緩慢な下落が続くリスクはそれなりに大きい、のである。


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