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過小評価される旧型リーフの中古価値と電力自給自足の方法

日本の家庭用太陽光発電は、2009年11月からスタートした固定価格買取価格制度(FIT)によって急速に普及したが、FIT契約で約束された電力の買取り価格(固定値)は10年で終了するため、10年以上前に太陽光パネルを設置した家庭では、電力会社からの買電価格が大幅に引き下げられていくことになる。

これまでの太陽光発電は、主に「売電」による収益化を目的としたものだったが、FIT契約の満期を迎えた世帯では、太陽光パネルで発電した電力を自家消費に回すことで、毎月の電気代を抑えようとするニーズが増えてくる。電力の自給自足を実現するには、新たに家庭用蓄電池(バッテリー)を設置して、太陽光パネルから発電される電気を、一度バッテリーに蓄えた上で、天候や昼夜に関係なく、家庭内に安定供給させる必要がある。

家庭用蓄電池は各メーカーが開発するようになっているが、まだ価格相場が高く、5kW容量のものが100万~150万円する。家庭用蓄電池の製造原価は、バッテリーの調達コストによって決まるため、まだ全国的な普及率が低い段階では、どうしても割高になってしまうのだ。

■パナソニックの家庭用蓄電池画像1

そこで、もう一つの自家電力消費システムとして注目されるのが、中古の電気自動車(EV)である。バッテリー自体の性能(容量)は家庭用蓄電池よりも大きく、車両の移動ができるため、外部の充電ステーションで蓄えた電気を家庭内で使うようなことも可能になる。

【旧型日産リーフのセールバリューとバッテリー価値】

電気自動車(EV)は、エンジン車より燃料代(電気代)のコストがかからないのが利点だが、中古市場でのリセールバリュー(売却価値)が低いことが問題点として指摘されている。

2010年12月から発売された初代の日産リーフは、中古車市場での人気が低く、新車時は 300万円以上したものが、5年落ち走行4万キロの中古車は50万円程度で売られている。

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初代リーフが不人気となった理由は、走行距離が3万キロを超えた頃からバッテリー性能の劣化が著しいというユーザー報告が相次いだこと。特に、冬場に暖房を付けるとフル充電しても60キロ前後しか走れないという話もある。劣化したバッテリーを新品に交換すると60万円以上の費用がかかることから、ディーラーでも、バッテリーの交換ではなく、新車への買い換えを勧めている。

しかし、バッテリーが劣化したEVがまったく無価値というわけではなく、家庭用蓄電池として転用することが可能だ。初代リーフ(ZE0型)の前期モデルには24kWh、後期モデルは30kWhの大容量バッテリーが搭載されている。一方、家電メーカーから家庭用蓄電池(ホームバッテリー)として発売されている商品は、容量が5kWhタイプのものでも、実売価格は100万円以上する。その点からすると、リーフの中古車は、バッテリー性能が多少劣化しているとはいえ、実体価値よりも低く評価されている。

もともと、日産リーフはホームバッテリーとして使えるようにも設計されており、「LEAF to Home」というオプションが用意されている。このシステムを使うと、リーフのオーナーは、安い深夜電力で車の充電をしておき、電気料金が高くなる昼間の家庭用電気をバッテリーから賄うことができる。また、外出中に無料の充電スポットで蓄えた電気を自宅に戻して使えば、家庭の電気代を実質タダにすることができる。


ただし、リーフの蓄電池利用については、大きく2つの欠点がある。1つは、昼間に車で外出しようとした時に走行用の充電量が不足してしまい、車本来の使い方としては不便が生じること。 もう一つは、「LEAF to Home」の純正設備(ニチコン製EVパワーステーション)の導入費用は約60万(補助金制度はあり)と高額で、節電投資の利回りとしては微妙なことである。

しかし、自動車としての役割は終えた中古のEVバッテリーと、安い給電設備使えば、かなり有効な家庭向けの節電手段になる。自動車メーカーでも、これから増えていくEVバッテリーの再利用ビジネスは検討しているが、このカテゴリーはサードパーティー業者としても参入できる余地がある。

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