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インフルエンザ対策に活路を開く、水の宅配市場

 冬の空気が乾燥する時期になると、インフルエンザやノロウイルス感染の被害が拡大する。その対策としては、手洗いやうがいが奨励されているものの、これだけでは万全とは言えない。特に、介護施設や多くの従業員が集まる職場では、集団感染を防ぐための有効策を考えていく必要がある。

そこで、新たなウイルス感染対策として、次亜塩素酸水が注目されている。これまでにも、次亜塩素酸は、プールの除菌や漂白剤などとして使われているが、塩素成分が強い原液を希釈して作るため、扱い方を間違えると危険性があり、用途は限られていた。しかし最近では、人体にも安全な低濃度の次亜塩素酸を生成できる技術が確立してきたことで、一般向けの用途にも広がりを見せている。そこに着目しているのが、水の宅配業界だ。

ウォーターサーバー設置による水の宅配サービス「クリクラ」を展開する株式会社ナックが、2018年10月から新事業として立ち上げているのが、自社製造した次亜塩素酸水溶液「ZiACO(ジアコ)」の宅配サービスである。

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利用者は、無料でレンタルできる専用の加湿器に水溶液を入れて、室内に自動噴霧することで、次亜塩素酸による空気中の殺菌や消臭効果が得られる。次亜塩素酸は、空気中に飛散したウイルスの殺菌にも効果があるため、幼児や高齢者、受験生のいる家庭などでは、インフルエンザ対策としても有効になる。

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ZiACO(ジアコ)の定期利用コースは、加湿器のレンタルは無料、次亜塩素酸水(ZiACO)の宅配価格が9リットル(3Lパウチ×3袋)で4,400円(税込)となっている。ただし、次亜塩素酸水の宅配注文が1ヶ月以上無い場合には、加湿器のレンタル料が月額1,100円かかる。

次亜塩素酸水は、いま考えられる空気中の殺菌対策としては有効な選択肢となるため、他の同業者でも、一般家庭やオフィス向けに次亜塩素酸水の宅配事業を検討する動きが出てきている。ミネラルウォーターの宅配事業は、宅配運賃の値上げにより採算が悪化していることから、付加価値の高い除菌水を新たな事業の柱に育てたいと考えている。

一方、次亜塩素酸水の欠点としては、水溶液の単価が高いため、日常的に使うと月々のコストが高くなることと、水溶液の殺菌効果は3ヶ月程度と短いため、大量に保管しておくことが難しいこと。また、若干の塩素臭があり、室内に噴霧した水溶液の成分がカーテンや壁のクロスに直接あたると、変色や劣化の可能性があることも挙げられている。

また、インフルエンザのウイルスは、空気感染をするのではなく、保菌者の咳やくしゃみからの飛沫によって感染していくため、次亜塩素酸水による部屋の加湿が、万全な予防策になるというわけではない。使用する場所と、インフルエンザ感染者の有無により、適切な使い方をしていくのが、費用対効果の面でもベストといえるだろう。

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