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丸裸にされた我々のプライベート

数年前に米国に訪問した際に、友人がiPhoneのカメラをシールでふさいでいたので、その理由を聞いたところ、

「気付かないうちに、勝手にカメラが起動されて録画されているという噂があって、怖いので使わない時はふさいでいる」

とのことでした。

まあ、悪質な都市伝説のようなものだろうと、冗談のように捉えていましたが、この噂は現実であったことが明らかになっています。

ルボニエックさんは2019年5月からの数カ月間、アイルランドにある米アップルの施設で外注先スタッフとして働いていた。

雇用の条件は「仕事内容を口外しない」「アップルの施設内で作業する」の2つ。大学院を修了したばかりの彼にとって、高賃金で最初の1カ月は住居も用意してもらえる仕事は、渡りに船だった。

仕事内容も単純だった。iPhoneやiPadなどに搭載する「Siri(シリ)」が録音した音声を聞き、AI(人工知能)が起こした文字と比較。実際と異なれば修正するだけだ。AIの性能向上のためといい、担当は母国語のフランス語。米仏語が堪能なルボニエックさんにとって、これほどお手軽な仕事はない。

一般的には、「ヘイ、シリ」と呼びかけなければシリは作動しないことになっている。だが録音データに含まれていたのは夫婦げんかや見ている映画の音、自身が患うがんのこと、性行為……。こんなときに「ヘイ、シリ」と言うはずがない。

作業画面を切り替えると、録音されたデバイスに保存されている音楽や映画、連絡先の名前や電話番号、位置情報まで表示された。こんなものを自分が見ていいのか。

日本では71万6379件が処理済みだった。

ルボニエックさんの我慢に限界が来たのは、小児性愛者らしき人物の会話を聞かされた時だ。上司に相談すると、「あなたたちが希望する音声だけを用意することなどできない」と突き放された。

アップルは個人を特定できない状態でデータを保管しているというが、名前や電話番号など複数のデータがあれば特定できる。社内には別に音声内のキーワードをiPhoneの他のデータと結びつける部隊がいた。会話内容を広告につなげるためだと思った。

最近TVCMで「みんなの個人情報を守る存在はアップル」と宣伝していますが、実際は、他の利益だけを追求する企業と同じ穴の狢だということが露呈しています。

iPhone購入者は、アップルブランドを信頼し、高額を支払い利用しているわけですが、自分の情報が知らないうちにここまで知られていることに驚かれるのではないでしょうか。

許諾なく、生活の細部を覗き見られることに平気な人は少ないはずです。

単純な話として、自分がやられたら嫌なことを、顧客に対して実行するのに何とも思わない組織が世界のトップ企業として君臨できる世界は、はたして正常なのでしょうか。

プライバシーがどうあるべきかの議論ではなく、失われていく企業倫理をどう担保すべきかという深刻な問題だと認識をしています。

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