いま話題の「界隈消費」がすごい理由を、Z世代マーケター目線で解説してみた
最近メディアやマーケティング業界で「界隈」が話題になってますよね。
「K-POP界隈」「ジャニオタ界隈」などの推し関連だけでなく「風呂キャンセル界隈」「伊能忠敬界隈」まで、さまざまな「界隈」の存在が明るみになり、2024年新語・流行語大賞にもノミネートされました。
今回はそんな「界隈」をZ世代目線で解説してみます!
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「界隈=ニッチなコミュニティ」さまざまなものが界隈化している
博報堂がSHIBUYA109 lab.と共同で出したレポートでは、界隈=「Z世代を中心に広がり始めた新しい生活者のまとまり」と定義されています。
コトバンクでは「特定の業界や趣味などの分野。また、それに関わる人たち」とも表現されていますが、僕自身は界隈のことを「ニッチなコミュニティ」と解釈しています。
近年、コミュニティは分散し、非常に小規模化してきています。
同じジャンルが好きな人同士でも、そのなかでどのような価値観を持っているのか。どのような媒体を使って情報を仕入れているのかなど、同じコミュニティの中でも複数のセクターが発生しています。
そんな小規模に分散されたコミュニティこそが「界隈」なのです。
趣味や価値観の多様化で生まれた「界隈消費」
そんな界隈は、マーケティング分野で新しい消費論としても注目されています。僕はこの「界隈消費」についても、コミュニティマーケティングの概念から派生したものだと考えています。
そもそもコミュニティマーケティングが広まった要因の1つには、SNSをはじめとするメディアの多様化が挙げられます。
毎日のように新たなアプリやメディアが登場し、人々の購買体験や情報の獲得ルートが複雑になるなかで、UGC(User Generated Contents)や商品に愛着をもつファン同士のコミュニティがエンゲージメントを集めるきっかけとして注目されました。
また、今はハッピーな共感で人々が繋がる「エモ消費」の時代。
Z世代の間では「友達の家に泊まった際に使ったシャンプーの香りに感動して購入した」「高校野球の9回サヨナラの場面に感動して記念タオルを購入した」など、購買行動が人や出来事を理由に発生していることが多いのです。
▼「エモ消費」について僕と私と株式会社がリサーチした調査
しかし、近年はこのコミュニティのなかでもさらに分散しているため、同じコミュニティ内に属している人でも趣味嗜好や魅力的に思うものが異なります。
だからこそ、コミュニティよりもニッチな集団で行われる消費行動や、情報の交換を促すマーケティングの概念が生まれるようになった。
これが界隈消費の考え方です。
「好き」に偏見のない時代!界隈消費が活性化した理由
ではなぜ今、界隈が広まり、界隈消費が活性化しているのか。
それは多様性が認められる時代になり、いわゆる「オタク的嗜好(何かに対して特別愛を深めたり、詳しくなったりすること)」を持つことがごく一般的になってきたからだと僕は考えています。
以前はひっそりと活動してきたオタクですが、「推し活」という言葉が一般的に使用されるようになったように、以前に比べて「好き」という感情に対して偏見を持つ人が減り、趣味に膨大なお金と時間を使うことに対してとても寛容な世の中になりました。
そのため、自分の好きなものを多くの人に伝えることに抵抗感のなくなり「学校のクラス」や「職場」ではなく「好きなもの」「普段の過ごし方」などで繋がり「界隈」を形成することが増えたのです。
SNSが台頭したことで、見ず知らずの人とも自分の好きなものや価値観で繋がることができるようになったのも界隈が話題となった理由の1つでしょう。
スタートアップやベンチャーのビジネスのカギに?「界隈消費」がすごい理由
界隈消費は上手く活用することで、これから起業するスタートアップや新規事業の良いタネや、追い風になると考えています。
界隈消費がすごい理由①:客単価が高い傾向にある
「界隈消費」はアイドルやアニメなどの推し活が分かりやすい例ですが、
なども例として挙げられます。自分の好みや趣味嗜好に合ったものにお金を払うため、一人あたりの客単価が高い傾向にあるのが特徴です。
ニッチなコミュニティにアプローチするためターゲットとなる母数は少ないものの、ユーザーインサイトを捉えやすく情報を伝える手段も絞りやすいため、マーケティングが効率的にできるのも界隈消費を活用するメリットといえるでしょう。
界隈消費がすごい理由②:良いものが増えた時代に、モノを買う理由になる
また良いものが増えて新しい商品の参入障壁が高くなったこの時代に、モノを買う理由としてアピールしやすいのも界隈消費を活用するメリットです。
近年はクオリティの高い商品が増えたため、商品の質で差別化をするのが難しくなりました。例えば「メモ帳」を売る際、これから新しい商品を作るのに利便性や独創的なアイデアで勝負をするのはかなり難易度が高いでしょう。
しかし、界隈の数は無限大です。「物忘れの多い人のための手帳」「子育て家庭のための手帳」などとターゲットをニッチにして分けることができれば、消費者に当事者意識(買う理由)が生まれ、少なくともこの世の中にいる誰か1人には深く刺さる商品が生まれるかもしれません…!
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日本全体で愛されるようなトレンドを生み出すのが難しいいまの時代ですが、「界隈」はスタートアップやベンチャー企業がブルーオーシャンを自ら生み出すチャンスをくれると僕は考えています。
今後も動向を追い、感じたことや学びをnoteで発信していきたいと考えていますので、
「『界隈消費』についてもっと詳しく知りたい!」
「Z世代に向けたマーケティングの手法は、どのようなモノがあるのだろうか」
という方はぜひフォローして、更新をお待ちいただけると嬉しいです。
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。他にもこんな記事を書いているので、ご覧いただけたら嬉しいです!
※このnoteは個人の見解です。
今瀧健登について
SNSネイティブ世代(Z世代)への企画・デジタルマーケティングを専門とするZ世代の企画屋。ハッピーな共感をフックに購買行動に繋げる「エモマーケティング」を提唱し、さまざまな企業・行政とタッグを組んでワンストップ・プロモーションを展開する。プロデュースしたアカウントやサービスは多くのZ世代の支持を集めている。「NewsPicks」や「日経クロストレンド」など、個人としても多数のメディアに出演。著書に『エモ消費』『Z世代マーケティング見るだけノート』など。X(旧Twitter):@k_hanarida)
日経COMEMOではZ目線でnoteを綴り、日経クロストレンドでは、「今瀧健登のZ世代マーケティング」を連載中。