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結束あっての多様性

ラグビーワールドカップ2019™日本大会で、日本チームが快進撃を続けている。日本代表31人中、主将を含め海外出身者は半数の15人を占める。「多様性」がもたらす強さのお手本のように言われるが、目に見えにくい対の概念として「結束」があることが、実は多様性を活かす必要条件だ。

ラグビーは特に精神性を重んじるスポーツ。まるで、扇を束ねる「要」のように、共通のよりどころとなる精神を大切にすることが、ラグビーの特徴と言える。

そのラグビー哲学とは、リーダーシップ、チームワークを尊び、個人として常に誠実であること。ニュージーランドの有名ナショナルチーム、オールブラックスの選手が、ランクに関わらず全員、使った更衣室をピカピカに掃除するというような行動が自然に取れるのも、ラグビーならではだ。

この精神性において、選手もファンも結束するからこそ、他の次元では、思い切って多様性を振り切ることができる。国籍だけではない。例えば、プロであっても、宗教上、日曜日は練習しないという個人の事情も尊重されるそうだ。

日本企業が「多様性」を謳って久しい。しかし、女性、外国人という分かり易い多様性を追うのに忙しく、つい「多様性のための多様性」になっていないだろうか?本来、多様性を活かすとは、根底にある結束を確かめた上で、「扇の広がり」に当たる多様性ージェンダー、国籍、文化などーを度量深く受け入れることだろう。「扇の要」にあたる「結束」が曖昧なままでは、単なるバラバラの集団になりかねない。

昭和の成功モデルは、同じようなバックグラウンドを持った同質な日本人男性に頼っていたために、「結束」は暗黙の了解だった。勤勉さもそこに含まれただろう。しかし、多様性を武器にするためには、ラグビー精神に倣い、企業が譲れない価値観を明文化する必要がある。採用や幹部登用の尺度としても使うべきものだ。

明文化する作業こそが、自社の存在意義を見直す良い機会となる。結束を確かめた上で、ブレーブブラッサムズのように、異なるバックグラウンドを持つメンバーが伸び伸びと活躍できる環境づくりが大切だ。


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