商品開発のプロセスを伝えることで、価格をあげることもできる
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商品開発のプロセスを伝えることで、価格をあげることもできる

最近、「値上げ」が話題になっています。

消費者の視点としてはなるべく安い方が嬉しいですが、企業の視点では「値上げ」は時に必要なことでもあります。

原料高騰でやむなく値上げという場合もありますが、企業のマーケターとしては商品の価値をしっかり高め、納得できる値上げをしたいものです。

ところで、商品の価値を高める方法の一つに、商品の「開発プロセス」を積極的に公開していく、というやり方があります。

この記事では、私の専門分野である「ユーザーイノベーション」の研究結果を使いながら、ユーザーとの共創型開発が商品の価値を高め、値上がりしても買う理由につながる可能性について、紹介したいと思います。

ユーザー共創情報が値上げに与える影響


みなさんこんにちは。博報堂でブランド戦略コンサルタントをしている岡田です。

経営学の博士号を持っているのですが、専門は「ユーザーイノベーション」、いわゆる企業とユーザーとの共創型の開発について研究しています。

みなさんも、お店で「お客様の声から生まれました」といった表示を見ることがあるかもしれません。

例えば、「就活生と一緒に作ったパンプス」や、「東大生のアイデアから生まれたノート」といった表示をみると、なんかいいな、と思うかもしれません。

もしかしたら、普通のパンプスや普通のノートよりちょっと値段が高くても払ってもいいかも、と感じてしまうことも。

私は、このような、商品のアイデア発案者がユーザーであると表示することによって販売効果が高まる現象を、「発案者効果」と名付けて研究をしています。

ある実験では、ユーザーと一緒に開発した新商品を、「お客様の声から生まれた」という表示がある店舗と、ない店舗の2つに分けて販売したところ、表示があったお店の方が売り上げが1.2倍高い、という結果が示されました(Nishikawa et al., 2017)。

全く同じ機能、同じ金額なのに、売り上げが2割も高いというのはすごいですよね。初めて知った時には、私もびっくりしました。

実は、この「発案者効果」ですが、売上をアップさせるだけでなく、販売価格をあげられる可能性があることも、海外の研究でわかっています( Schreier, Fuchs, & Dahl, 2012)。

この実験によると、新発売のシリアルを、一方は「ユーザーによる設計」という表示を、もう一方は「企業の開発者による設計」という表示をつけた上で、「払ってもいい最大金額はいくらですか?」という質問をしています。

その結果、「ユーザー」と表示された場合は平均12.28€(約1,718円)、「企業の開発者」と表示された商品は平均8.09€(約1,132円)という回答でした(円への換算は2022年6月14日現在)。

「支払ってもいい金額」を、専門用語でWTP(Willingness To Pay:支払い意欲)と言いますが、発案者がユーザーであるという表示は、なんと約1.5倍のWTPを高める効果があると示されたのです。

ユーザー共創情報が効果的な理由とは


では、なぜ「ユーザーのアイデアから生まれた」と表示された商品の方を、人は高く払っても良いと考えるのでしょうか。

様々な要因がありますが、1つには、自分と同じユーザーのアイデアから生まれた商品の方が、「自分のニーズを把握してくれている」と消費者が感じるからだ、と言われています。

例えば、就活生がパンプスを買う時に、「靴のメーカーの人が考えるパンプスよりも、自分と同じ就活生が考えたパンプスの方が自分のニーズにフィットしてそう」と思うのではないでしょうか。

このように、自分と同じ目線であるユーザーのアイデアから生まれた商品だと知った消費者が「この商品は自分のニーズにぴったり合うものだ」と感じることで、商品の評価が高まるのです。

また、「ユーザーと一緒に考えた」という表示は、企業やブランドに対するイメージアップの効果もあります。

最新のブランド価値ランキングに関する記事では、ブランドの「共創性」が高いブランドが、評価が高まる傾向にあると述べています。

新型コロナ下で生活や将来に不安を感じる人が増えている。商品やサービスの開発に消費者の参加や協働を促す「共創性」が高い企業がブランド価値を伸ばした。インターブランドジャパンの並木将仁社長は「一緒に将来をつくるという姿勢に価値が見いだされるようになった」と話す。

今や、多くの企業が、商品やサービスの開発プロセスにユーザーを参加させたり、SNSなどを通じて意見を聞きながら開発していたりと、様々な形で共創型の開発が増えています。

しかし、意外とその事実を公表していなかったり、していても消費者の目に届いていないケースがあり、もったいないな、と感じています。

もちろん、商品開発に参加している消費者は、その企業の「共創性」が高いことは知っています。しかし、実際に商品開発に参加できる消費者はごくわずかで、ほとんどの消費者にはその事実は届いていません。

「ユーザーと共創した」という情報は、消費者に対して魅力に映り、売上アップや値上げに対する納得できる要因にもなる可能性もあります。

原料高や値上げに悩む企業が増えている今、商品の価値を高めて、お客様に納得して支払ってもらうためにも、商品開発のプロセスを公開することが価値になることは、もっと世の中に知られても良いのではないかと思います。

※「発案者効果」についてさらに知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

※Twitterでも、気になったユーザー共創型開発のニュースは取り上げていきますので、興味ある方はフォローお願いします

引用文献:
Nishikawa, H., Schreier, M., Fuchs, C., & Ogawa, S. (2017). The Value of Marketing Crowdsourced New Products as Such: Evidence from Two Randomized Field Experiments. Journal of Marketing Research, 54(4), 525–539.
Schreier, M., Fuchs, C., & Dahl, D. W. (2012). The Innovation Effect of User Design: Exploring Consumers’ Innovation Perceptions of Firms Selling Products Designed by Users. Journal of Marketing, 76, 18–32.

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岡田庄生 | 博報堂ブランド・イノベーションデザイン

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岡田庄生 | 博報堂ブランド・イノベーションデザイン
博報堂ブランド・イノベーションデザイン局 部長 / 博士(経営学) / 共創型のブランディング・イノベーション創出が専門 / 日経COMEMO KOL / 著書「アイデア練習帳」(日経文庫)ほか / 法政大学・青山学院大学・武蔵野大学 非常勤講師 / 趣味はキャンプとコーヒー☕️