ニュースレターを活用する地方メディアの可能性を感じる3つのトレンド
今週のニュースの中で何度となく遭遇して気になった会社があります。米国ニュースレター配信プラットフォーム企業の「サブスタック(Substack)」です。そして注目した同社関連ニュースの一つは、今回合計100万ドル(約1億1,000万円)を投じて地方に根付いたローカルニュースメディア支援のプログラム、「Substack Local 」を立ち上げ、独立系のライター約20人〜30人に対し、最大年間10万ドル(約1,100万円)を提供するというものでした。
【1】ニュースレター配信プラットフォーム企業、サブスタックの躍進
昨年あたりから米国のニュースメディアにおいてあらゆる場面で話題に登り、苦境が続くメディア業界の救世主、或いは「クリエーターエコノミー」という言葉とともに、個人による収益獲得の手段として話題になっているのがサブスタックです。改めてその注目度の高さ、影響力の大きさ、そして新たな一手としてローカルニュースに取り組んでいる点が気になりました。
著名ジャーナリストが大手メディアを辞め、サブスタックを利用して有料ニュースレターを立ち上げる、というニュースがコロナ禍の時期を経て話題になることも多く、サブスタックの有料購読者の合計数が50万人を超えている、という報道もされていたのですが、今一つピンときていませんでした。そんな中、以下メディア業界のニュースサイト「プレス・ガゼット」に掲載されている10万人以上の有料デジタル読者を抱えるメディアのリストをみて、その存在感が以前より実感を得られるものになりました。ニューヨーク・タイムズの約670万人、ワシントン・ポストの300万人という有料購読者数に対し、サブスタックは各種個別ニュースレターの合計数とはいえ、有償でニュース購読をする人の数が50万人という規模を誇り、ランキングも10位に入っているという事実に驚きます。
【2】eメールによるニュースレターを活用したローカルニュースへの積極投資
もう一つ気になったのはAxiosが報じていた「(eメールの)受信箱に移動するローカルニュース」という短尺記事です。こちらではサブスタックのみならず、以下のような一連の企業がローカルニュースに可能性を感じ、ニュースレターを活用した新たな取組を進めている様子が報じられてます。
Facebook - 新しいニュースレター発行プラットフォームの大部分を、地域社会を単独でカバーする独立したローカルジャーナリストの支援に充てる予定。
6am city - 米国南東部でスタートしたローカル・ニュースレター会社「6am city」は、年内に少なくとも15の市場に進出する予定。情報筋によると、同社のニュースレター購読者数は合計75万人以上で、年間収益はおよそ500万ドルとのこと。
Patch - ハイパーローカルなデジタルニュース会社であるPatchは、昨年、Patch Labsというプログラムを立ち上げ、地元の記者が自分でニュースレターを発行して収益化できるようにした。
Axios - ワシントン、ウォール街、シリコンバレー発のニュースを素早く、短尺で読みやすく、ニュースレターを活用することで躍進しているAxiosも2020年末にノースキャロライナで成功していた独立系のローカルニュースサイト「Charlotte Agenda」を買収し、ローカルニュースメディア戦略に力を入れています。2021年現在、5つのローカルニュースレターのメディアを運営し、今後拡大する計画を立てています。運営ノウハウは今までの経験を活かし、配信のためのプラットフォーム技術、総務・広告営業などは本社で集約し、各地域版では2人のライターがいれば立ち上げが可能、と自信を見せています。
【3】コロナ禍を経てますます高まるローカルニュースの需要
3つ目に気になったのはトレンドは、毎年定点観測的に政府、メディア、企業などの信頼度数を調査し、公表しているPR会社エデルマン社による「トラストバロメーター」の2021年版の結果でした。ダウンロード可能なレポートの19ページには信頼度において、「地域の人々」が「科学者」、「雇用主・CEO」に次いで3位に位置し、ジャーナリストや政府や宗教のリーダーより上位に位置していることに驚きます。コロナ禍で地域の感染状況、ワクチンの摂取状況、地方でのコミュニティ関連の情報の重要度が高まっていることが伺えます。
こうした米国におけるトレンドはいずれ国内でも広がっていくことと思います。リモートワークの広がりと併せて地方移住という大きなトレンドは当然国内でも起きていることとで、多拠点生活、関係人口などの議論がされる際、当然「地方メディア」への注目が今まで以上に広がっていくことと思います。
地方ニュースを取り上げるブログ、ニュースサイト運営、そしてSNS活用と併せ、メールによるニュースレターを活用することでより読者との関係構築を深める海外の方法から学べることもあるのではないかと思います。国内で既に注目されている多様な地域メディアの事例と併せ、注目していきたいと思います。
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