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世界観の転換を鳥瞰すれば、日本の進む道が見えてくる

デジタル化促進と脱炭素が、菅政権の旗印になっている。この二つは、いま旬な話題をペアにしただけだろうか?一歩下がって、世の中の流れを考えると、つながりが見えてくる。

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20世紀後半に栄えた産業資本主義は徐々に終わりを迎え、ポスト・産業資本主義、または知的資本主義に置き換わられるという理解自体は、新しいものではない。しかし、その転換には時間がかかるため、私たちはとっくに21世紀を迎えても、産業資本主義の残照を生きている。産業資本主義の隆盛を支えたのは、フリードマン理論に代表される株主第一主義であり、グローバル化の進行だった。

しかし、ここに「不都合な事実」が持ち上がる。IT革命や自動化が拍車をかけた格差拡大、あくなき成長追求の陰で進んだ環境問題、特に温暖化の二つの問題は、2020年以前から指摘されてきた。その不都合にダメを押すように降ってわいたのが、コロナ禍である。これにより、産業資本主義の終焉は早まる。時代のキーワードは「成長」から、「循環」「持続可能性」「長期的価値」へ加速するだろう。

このポスト・産業資本主義の世界で重視されるのは、野放図なグローバル化に代わるローカル化、急な変化にも耐えられるレジリエント化であり、これを支える思想は株主偏重からマルチ・ステークホルダー主義へと変化する。機関投資家によるESG重視の流れが、これを後押ししている。

では、このような大きな流れを踏まえて、日本の産業界はどのように競争力をつければいいのだろう?幸い日本企業の経営スタイルは、偏った株主第一主義に走らず、マルチ・ステークホルダー主義と相性が良い。これに加え、二つの視点が日本企業ならではの強みに寄与すると考える。

まず、ローカル&レジリエント化である。日本は島国の上、国土が小さすぎず大きすぎず、相対的に均質な国民を持つ優位がある。ローカルに完結し、循環できるような強靭なサプライサイクルを実験するには、良い地域特性を持っている。

もう一点は、ひとへの投資だ。イノベーションを生む無形資産を重視するポスト・産業資本主義では、人材の優位性がそのまま企業の競争力となる。ところが、日本の教育は、学校も職場も含め、産業資本主義を引きずったように、画一的な「及第点人材」を生み出すことに重きを置いてきた。その結果、与えられた質問に答えることはできても、自ら問いを立てることには弱い。この分野は、これから日本が官民をあげて方針を変え、キャッチアップする必要がある。

二つの視点に共通して、背景には不可逆的なデジタル化の進行がある。しかし、何のためのデジタル化なのか?デジタル技術をツールとして、ローカル化、レジリエント化を進める。また、デジタルに「使われる」のではなく、創造的に「使いこなす」人材を作る。目的とツールの主従関係を間違えないことが大切だ。

日本の過去の栄光は、産業資本主義に支えられていた。過去の成功パターンに縛られては、新しい時代に結果が出ない。これからポスト・産業資本主義が本格化するときに、新しい心構えで先手を打つことが、今こそ求められている。

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