二度あることは三度ある?アルゼンチンのリスク顕在化
米国10年債利回りが2013年以降はじめて3%を上回って引けた4月25日以降。アルゼンチンペソは5月21日現在20%下落している。5月8日には、IMFとクレジットライン設定について協議をはじめたと報道されたが、この段になって漸くアルゼンチンの窮状を知ったというのが多くの金融市場関係者の感想であろう。
アルゼンチンが脆弱なのは定量的には次の二点。第一に、経常赤字の補てんを対内証券投資に大きく依存してきたため、海外の金利市場の動向に左右されやすい。第二に、対外債務が大きい割に外貨準備が小さいこと、である。定性的にもやはり二点。第一に、既にアルゼンチンは2001年にデフォルトし、その後も2014年には事実上の債務不履行に陥ったばかり。しかも、このアルゼンチン債務保有者と政府との間で支払が揉めた経緯も記憶に新しい。第二に、2015年末に就任したマクリ大統領は緩慢ながらも構造改革をしてきた。が、それが遠因となり国民の支持率が低下している。こうした中でIMFの要求する更なる構造改革を国民が受け入れられるのか、疑問が残る。
IMFは最早アルゼンチンを助けるべきでないとの見方もあろう。2000年以降わずか18年の間に三回目のデフォルト可能性となれば、救済の必要なしとの考え方は納得できる。ただし、企業や銀行とは異なり、ソブリンは消滅するわけにはいかない。融資を受けるには制裁も変革も求められるが、放置できないのも一方で事実だ。
さて、このアルゼンチン問題はバブル的な様相を覆し、金融市場の潮目となるのだろうか。現時点ではまだ個別国のリスクと考えられる。他にはトルコなども売られる対象となっているが、売られる対象となるのは、まだ当事者国に問題が指摘できる場合である。もっとも、財政悪化見通しとFRBの引き締め姿勢を反映して米長期金利の3%台が定着した今、リスク資産に利食い売りが出易いことは見ておかねばなるまい。その意味ではバブル崩壊の前兆とまでは言えないながら、一定の警戒が必要になってきていることは確かである。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30241250Z00C18A5000000/
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