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春、写真を愛する皆さんと考えたいこと

春、桜や花々が、冬の長い長い眠りから目を覚ました、瑞々しい季節となりました。心躍るような風景を前に、カメラを片手に出かける方もたくさんいらっしゃることと思います。

だからこそ改めて、現場での「リスペクト」について考えたいと思います。

先日近所の公園で、初めてカワセミの姿を見ました。池の真ん中の石にちょこんと、鮮やかな色彩の一羽が止まっている姿は愛らしく、池のほとりで静かに眺めていました。すると「おーい、見るならこっち側で見てくれよ」と少し離れた場所からかけ声がしました。「そこに鳥が停まるの待ってるんだからさ」とカメラを持った男性たちが私たちの頭上を指さしています。どうやら桜の枝のことのようです。

複数人で撮影しに来ているグループでしたが、彼ら自身や機材が、池にかかっている小さな幅のかなりを占めてしまっていました。他の方々が通れないほどではありませんが、私も何となく通りづらくてその橋を避けたほどです。

これはほんの些細な例かもしれません。例えばこれまでも、眠っていた鳥を意図的に散らして写真を撮ったり、自然のものに限らず、電車を撮りたいからとホームに立っていた駅員さんに怒鳴って座らせる、などの行動が問題となってきました。一部の方々の振る舞いで、「写真愛好家はマナーが悪い」と一くくりにされてしまうことは、写真を愛する一人として本望ではありません。

公園は多くの方々が、各々のペースで楽しむための大切な空間です。「いい写真を撮りたい」というエゴのために、誰かを意図的に動かしたり、自身の都合のみで指示を出していいのか、伝えるにしても伝え方があるのではないか、ということは、撮り手として常に考えたいことです。

写真を「とる」の「とる」という字は、様々な漢字で表現されます。相手に断りのない「盗る」であってはもちろんいけないし、そこから相手の楽しみや時間を必要以上に「取る」ことも違うはずです。

カメラを持っている人間は時に、持っていない側からすると威圧的に見えてしまうことがあります。だからこそカメラを持つ側が、その場や人々に対する「リスペクト」が不可欠ではないでしょうか。

写真は全てが「頂きもの」です。その場にいさせて頂く、時間を頂く、そして、撮らせて頂く。ご飯を作ってくれた方に「いただきます」と感謝してからご飯を食べるような気持で、シャッターを切ることができれば。この春がもっと、楽しい季節となるはずです。

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安田菜津紀(フォトジャーナリスト)

フォトジャーナリスト。東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。J-WAVE「JAM THE WORLD」水曜日ニューススーパーバイザー。TBS「サンデーモーニング」コメンテーター。

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